新たな子犬たち30

以前、ブンタを預けた里親希望者に連れて行った子犬にはアイと言う名前をつけた。
この子犬は一番最後に保護した子犬だった。
土曜日に連れ帰ってもらったオスの子犬にはまだ名前をつけていなかったので、好きな名前をつけてもらってかまわないといっておいたら、その日の夜に連絡メールが来て、マサムネという名前にしたということだった。
開けて次の週、二匹の子犬がどうしているかがちょっと気になりだした14日の水曜日、アイを預けた家から気になる電話が入った。

  • 保護直後のアイ(2011年9月4日撮影)


アイが食べたものを吐いて、元気がないとのことだった。不安がざわざわと心を乱し始めた。アイを預けるにあたっては、最初からいくつかの点で不安があったのだ。
一つは保護してから3日目には、希望者のうちに連れて行ったので、ワクチン注射をしていなかったことだ。
この希望者は、以前にブンタを引き取ったときから住所が変わっていた。
ブンタを連れて行ったときには、先住犬がいたので、ブンタにはワクチン注射をして連れて行った。
しかし、引っ越してからは、その犬は実家の母親に返したので、今は他の犬はいないというからワクチン注射は後回しにしてもかまわないと判断して、アイを連れて行った。
もう一つ不安な点は、この希望者には3人のまだ小さい子供がいて、子犬の世話には手が回らないのではないかということだった。
小さい子供は、子犬にとっては天敵だ。子供は子犬を動くおもちゃ程度の認識しかない。
どんな扱いをするか分かったものではないし、子供そのものが出す声や動作一つ一つが子犬にとっては強いストレスとなる。
電話で様子を聞くと、ウイルス感染が疑われた。最も恐ろしいのはバルボウイルスだ。
アイと接触があった人物で、犬を飼っている人はいなかったと聞くと、実家の母がやってきて、アイを触たという。実家などという言葉を使うから、てっきり遠くはなれたところに住んでいると思ったら、引越し先のアパートの斜め上の部屋に母親は住んでいるというではないか。
そして、新しい子犬がやってきたことを知るや、この母親がやってきてアイを触ったらしい。
子犬にとって恐ろしいウイルスの種類は多く、予防接種が終わって数日経つまでは、他の犬との接触はもちろんのこと、他の犬を触った人間も一切近づけてはいけないというのは、犬を飼う人間の常識なのだが、この里親希望者はそんなことも知らなかったのだ。