新たな子犬たち31

電話でアイの様子から、ウイルス感染しているかもしれないから、なるべく早く、獣医に連れて行くようにと伝えて、電話を切った。
ざわざわとした胸の不安がいつまでたっても消えなかった。
次の木曜日に朝からアイの預かり先に電話をかけてみたが、誰も出なかった。昼過ぎにも電話をかけたがやはり応答なし。
夜になって向こうから電話がかかってきた。夜になってアイは元気が出て、食べ物を食べるようになったという。獣医に連れて行ったところ、ウイルス感染ではないだろうという診断だったという。
ああよかった。最悪のケースを想定していたので、心のつかえが下りた一瞬だった。
しかしその安心はつかの間であった。
土曜日の朝早くにかかってきた電話で、アイが金曜日の夜に息を引き取ったことを知らせてきた。そのことを聞いて、受話器を握る手が震えた。
声がどんどん上ずり、自分でも何を言っているのか分からないことを受話器の向こうに話した。

  • 家に戻ってきたアイ(2011年9月18日撮影)


次の日、アイの預かり先にこちらから電話をかけた。アイの遺体を引き取りに行くと相手に伝えた。死んでしまった子犬をどう処置するかが心配だったのだ。
アイは小さなダンボールに入れられて、また家に帰ってきた。
ダンボールに貼られたガムテープをはがし、中のアイを見たとき、まるで眠っているように見えたが、その体は冷たく、すでに死後硬直していた。
胸の奥からこみ上げてくる激しい悲しみをどうすることも出来なかった。
こんなことになるのなら、あの時アイを見つけて家に連れ帰るのじゃなかった。そんな後悔が繰り返し心に浮かんでは消え、出口のない堂々巡りを繰り返した。