comeとgo再び#1

comeとgoの使い分けに関しては、「日本人の英作文23」から数回に亘って書いたことがある。
しかし、このときの説明は、comeとgoの基本的な意味を考えてから、実際の事例への適用を考えるというものだった。
原理的なものを先に考えて、これを個々の具体的事例に適用するというのは、いわゆる演繹的思考法で、私にとってはこれはほぼ絶対の思考手順だから、そうしたのだが、この手法になじめない人のほうが多いようで、前回の説明では、先の読み進めば読み進めるほどチンプンカンプンという意見があった。それで、今回、原理的説明は後回しにして、具体的な使用例を先に見てみることにする。
前回の説明のときにも書いたと思うが、comeとgoの使い分けが問題になるのは、日本語の「行く、来る」とは、使い分けの基準が違うため、日本人が英語でしゃべる場合や、英語を書く場合に良く間違えるからだ。
それでは、日本人がcomeとgoの使い分けを良く間違える状況から見ていく。
○状況1-a
店に客が入ってくる。しかし、店員が店内に見当たらない。店の奥に声をかけると、奥から返事がある。
Customer: Hello. Is someone here?
Clerk: Yes, I'm (・・・).
日本語でこの場面を再現すると
客: こんにちは。だれかいませんか。
店員: ハーイ、直ぐ(・・・)ます。
(・・・)とところ、日本語で「来る」と「行く」のいずれかを入れるとすると、「行く」の活用形「行き」が入る。
しかし、英語の(・・・)にはcomeの進行形、comingを入れるのが正解。
○状況1-b
会社で突然の残業を言い渡された社員が、その残業を終えて自宅で待っている妻に電話をかける。
Husband: Hi, this is me. I'm (・・・) home now.
Wife: Have you done the job? I'm waiting.
これも同じく日本語にすると
夫: もしもし、私だ。これから(・・・)。
妻: お仕事終わったの。それじゃ待ってるから。
英語のほうは、括弧にcomingが入り、日本語のほうは「帰る」が入る。
「come=来る、帰る go=行く」という理解だと、1-bの英語にcomingを入れて正解でも、1-aの英語にはgoing入れてしまい不正解となる。
1-bの状況をちょっと変えてみる。
○状況1-c
その日の仕事を終え、帰宅する準備をしている社員のところに、上司がやってくる。
Boss: Have you done the job for today?
Clerk: Yes. I'm (・・・) home now.
Boss: There is something to be done by today. I want you to do the job right now.
上司: 今日の仕事はもう終わりかい。
部下: ええ、家に(・・・)ところです。
上司: 今日までにやらなければならないことがあってね。君にその仕事をやってもらいたいんだが。
この状況で、日本語のほうは1-bと変わらず「帰る」が入るが、英語のほうはgoingを入れるのが正解。
日本人としては、「帰る=come」だと思っていると、なぜこの場合にgoingが入るのかが理解できない。
逆に、「go=行く、帰る」と理解していると、今度は1-bの英語の場合に、なぜcomingとなるかが分からない。
日本人が混乱するのは、「行く、来る」と"come, go"の対応関係だけでなく、「帰る」をgoで表すのか、comeで表すのか、英語の使い分けがうまく理解できていないからだ。
状況1-aから1-cまでのcomeとgoの使い分けの原理については次回に。