ある英語の選択問題#5

文頭に分詞が来る分詞構文は、使用頻度が限られている。
それでは、文中や文尾での使用はというと、文中は文頭と同じぐらいの頻度だが、文尾での使用は特に珍しくない。
小説でも、評論文でも、それから新聞記事でもよく見かける。ただし、意味用法は文法書で書かれているものとは違うものが多い。
たとえば、ちょうど私が今読んでいる小説"DR. JEKYLL AND MR. HYDE"を例にとると次のような分詞構文が次々と出てくる。
(6) As soon as he got home, Utterson sat down and wrote to Jekyll, complaining of the way his door had been shut against him, and asking the cause of this unhappy break with Lanyon.
(7) And then, before their eyes, the face seemed to blacken, to twist and alter and melt before their eyes, becoming something different, something horrible and frightening.
(8) A cry followed; he almost fell, but seized hold of the table, staring with fixed eyes and open mouth.
なぜ文頭より、文尾のでの使用が多いかといえば、その使用目的が同じような表現の繰り返しを避け、表現に幅を持たせるとか、それ以前の記述で推測可能な言葉を使わずに、文にスピード感を与えたり、簡潔性を持たせるというものだからだ。
これが文頭での使用だったら、何が省略されているのかよくわからない場合が多くなるに違いない。
議論になっている選択肢Cを当てはめた文章は次のようになる。
Eventually, science becoming aware of the atomic nature of matter, it was finally realized that magnetism and electricity were not separate phenomena.
この文を読んで、正解のBを当てはめたときの文と同じことを意味していると分るだろうか。
2009年投稿の質問者は「 Cについては独立分詞構文だと考えれば文法的に問題はないし,意味が通じなくなるということもないように思えます」などと書いているが、それは正解の文を先に読んだからで、この文だけだと何らかの修正を加えないと意味が取れなくなってしまうのではないか。
私がもしこの文を読めば、becomingは分詞は分詞でも、分詞構文よりはるかに使用頻度の高い形容詞用法の分詞だと考える。
すると、その後のコンマの次のitは、当然scienceだから、itは不要。さらに受身にする必要もないし、Eventuallyとfinallyも意味が競合するから、finallyも不要。
つまり、次のような文を書き手は書きたかったのだと理解する。
Eventually, science becoming aware of the atomic nature of matter realized that magnetism and electricity were not separate phenomena.
この文だとちゃんと意味が通るし、しかも、正解とされる文との違いもたいしたことはない。
ちなみにこの文を訳すと「だんだんと原子レベルでの物性が科学的に明らかになってくると、磁力と電気は別々に発生するものではないことが認識されるようになった」となり、なんら問題がない。
修正を加えなければ理解できないような文の容認度はゼロに等しく、「文法的には正しいかもしれないが」などという留保を与える必要はない。要するに誤文だ。
ところで、文尾に用いた分詞構文がどのような意味を持つかについて、文法書に書かれてるものとは違うと述べたが、その一例として、上に挙げた(6)や(7)の文の意味を考えみればよい。
文法書では分詞構文は接続詞と主語を加えて、書き換え可能としているが、(6)の文をこの法則にしたがって書き換えるとするとどうすればよいのか。