からだのことS4#10

脂質に関して読んだ本がある。『「隠れ油」という大問題』というタイトルだ。本の帯封には「あなたが年間13ℓ飲んでいる植物油の怖い話」とある。
この本が全編を通じて主張しているのは、植物油がいかに健康に良くないかということ。
しかし、植物油がすべて健康に良くないわけではない。本書でもp70〜p73にかけて、二つの必須脂肪酸の摂取バランスが大切だという記述がある。
筆者がとりわけ目の敵にするのは、必須脂肪酸のうちのn-6系の方。つまり、リノール酸
筆者の長女がアトピーであったこと。その原因をいろいろ探るうちに日常的に摂取している植物油が原因だという結論に達したようで、自分の愛娘を苦しめ続ける原因となったリノール酸を徹底的にこき下ろしている。
それなら、帯封にも「リノール酸、この恐るべき油の正体」とでも副題をつけて本にすべきだろう。
帯封にある「あなたが年間13ℓ飲んでいる植物油の怖い話」というが、この13ℓというのがリノール酸だけの分量なのか、それともその他の植物油も含めての話なのか不明。
また、「年間13ℓ飲んでいる」という13ℓという数値はどういう統計資料を基にしたものなのか根拠不明。本書のどこかには書いてあるのかもしれないが、見つけることができなかった。
中途半端な表題は主張したい核心をあいまいにするだけだ。
本書は植物油の問題を単なる個人レベルの健康維持の問題ではなく、国家全体の問題としてとらえているようで、その第4章の表題は「油によるニッポン侵略史」、またその第5章は「油まみれが招く、3つ悲劇---少子化・短命化・認知症と、危険な油」という表題になっている。
少子化の項では、一時大きな話題となった環境ホルモンなる言葉で、植物油のキャノーラ油と水素添加植物油をやり玉に挙げている。
もうこうなると、脱植物油原理主義とでもいうべき主張でちょっとついていけない。
ただ、n-3系とn-6系の摂取バランスが重要というあたりまでは十分に納得のいく話。自分の食生活でのこの二つの摂取バランスは、実際に自分が食べているものを、一週間ほどの期間、調味料、ドレッシングなどもふくめ、すべて計量、分析して初めてわかる。
これがなかなか大変だというのは前述の通り。
私自身の場合は、前回記事でも明らかなように、本書が目の敵にしているn-6系は、ダイエット前で、一日当たり23グラムほど。植物油の比重は0.91ほどなので容量としては25.3mlほど。ということは年間9ℓ少々の消費となる。
現在の食事だとこれが年間4.8ℓになる。
もっとも、私は脂っこいものは嫌いだから、この程度の消費量。揚げ物が好き、マヨネーズをなんにでもかけるというような人だと年間のn-6系の消費が13ℓは十分にあり得る。
しかし、問題は消費量よりも、やはり多種類の植物油のバランスにあるのだと思う。日本人の油脂の消費量は実はある年代からたいして増加していないのだ。過剰摂取はそれほどないように思う。
よく言われる「食の欧米化」だが、実態は欧米化などからは程遠い。実際、欧米社会で暮らしてみれば、よくわかるが、日本人の食は相変わらず、炭水化物中心で肉や油の消費は大したことはない。