からだのことS4#11

リノール酸の摂取に関しては、過剰摂取やほかの脂質との摂取バランス以上に問題ではないかと思える点がある。
それは、リノール酸は多価不飽和脂肪酸であるために、大変、酸化しやすいのに、その使用法や保管法には、酸化に対する配慮がほとんどない点だ。
メーカーのHPには、リノール酸の製造には酸化防止のための対策がとられているとあるが、そもそもが酸化しやすい油。どんなに対策をしても酸化を完全に防ぐことはできない。
これが、購入後の保管ともなるとせいぜい、冷暗所での保管ぐらいのことしかされないから、ボトルを開封してから以降は、ボトルの中身の酸化がどんどん進む。
天ぷら油などは、一回使用で即捨ててしまう人はあまりいないのではないだろうか。
高温に温められたてんぷら油、その中身は大豆油、菜種油などのリノール酸が主成分だから、高温にしただけで酸化は一気に進む。
使用後もこれを濾して、保存しておき、再度利用するなどということをすれば、酸化はさらに進む。
その油で揚げたてんぷらは、酸化したリノール酸の衣をまとった非健康食品だ。
天ぷらだけではない。揚げ物全般が同じ理屈で非健康食品だと思っていい。
酸化していないリノール酸は、ほとんど匂いも味もしない。しかし、揚がったばかりの天ぷらでも、油で揚げた食品共通の匂いや味がする。これは酸化した油の匂いと味なのだ。
以前にオーストラリアに滞在していたころ、休日にオーストラリア人と一緒に地元で行われるオートレースの観戦で出かけた。
昼近くになって、観戦客目当てのフィッシュアンドチップスの屋台が出ていたので、それを食べることに。
揚がったフィッシュアンドチップスは、古新聞でくるんで客に差し出される。
油でべとべとなので、いくら新聞で包んであっても、あっという間に新聞紙を通して油が手にべたつくようになる。
何ともまあ、体に悪そうな食べ物だと思っていると、オーストラリア人の男性は「これって体に悪いだよね。でも、この油の味が旨いんだよね」といった。
そう、彼らは当時すでに、酸化した食用油の危険性を十分認識していたのだ。
それを知った上で食する。まあ、これも彼らがよく口にする自己責任という奴だろう。
一方、日本人はどうだろう。
天ぷらといえば、今や日本の伝統食の仲間入りをしたのではないかというぐらいポピュラーな食べ物。これが実は健康上、問題ありなどとは思いもしないだろうし、そういったことを口にする人間を疎ましくさえ思うのでないだろうか。
先に引用した本の著者は、リノール酸を悪い油として糾弾しているが、この油が酸化した場合のことについては何も言及していない。
たとえ過剰摂取でなくても問題なのが酸化した食用油の問題だと思う。
ちなみにうちには、天ぷら油は置いていない。天ぷらなどの揚げ物はほとんど食べないので購入そのものがない。
たまにスーパーでできあいの天ぷらを買ってみるが、どうにも油臭くっておいしくない。
値段はそれなりにするので、なんだかとても損をした気になる。
金を出しておいしくもなく、体にも悪そうなものを購入することはないのでスーパーで天ぷらを買うのは、もう止めようと思う。