お楽しみの時間

外飼いのワンコたちには、餌のほかにも楽しみにしていることがある。
それは、ライトバンに乗ってやってくる豆腐屋さんだ。
最近ではあまり見かけなくなった路上販売の豆腐屋さん。
近くにスーパーや、これといった食料品店のない、このあたりでは、豆腐は買いに出かけるものではなく、向こうから売りに来るのを待って買うのが当たり前であった。
チリンチリンと、豆腐屋の鐘の音が聞こえると、家のワンコたちはみんなそわそわし始める。

  • 全員集合


売れ残りの練り物のテンプラをもらえるからだ。
いつもの時間ともなれば、みんなそろって玄関の門のところで待ち構えている。
去年死んだヒナもこのテンプラをとても楽しみにしていた。
散歩の時間以外、ほとんど自分用のクッションの上で寝てすごしていたヒナも、豆腐屋の鐘の音がすると見違えるように元気になり、門のところでお出迎え。どんなに食欲のないときでも、これだけは別腹とでも言うように、おいしそうに食べていた。

  • 争奪戦


この豆腐屋さん、残念なことにこの5月で廃業することにしたそうだ。
この地域を回るようになって33年だそうだ。
腎臓を悪くして、動物性たんぱく質の摂取を制限されていたわたしに、豆腐は貴重な蛋白源である。
一日必ず一丁の豆腐を食べ続けて、もう40年ぐらいになる。この豆腐屋の豆腐だけで、これまでいったい何丁の豆腐を食べたのだろうか。
豆腐屋さんが来なくなれば、ワンコたちにとっても、楽しみが一つ減ることになる。
残念ではあるが、なんにでも終わりのときが来るというなのだろう。