日本人の英作文2016-18

先の「してしまった」で上げた例文で、1〜7は、いずれも主語をIにして英訳すべき文。
また、8.はI以外の人物、9と10は物が主語になる。
それぞれの動詞の意味を分析的に言うと次のようになる。
1. 非意図的結果
2. ある環境における、結果としての残念な状態
3. 意図的行動であるが、結果に対する一種の後悔
4. 予想外の好結果
5. 状況がもたらす望ましくない心理状態
6. 自身の願望による避けがたい行動
7. 同上、結果に対する一種の後悔
8. 自分以外の人の行動や状態が、自分にもたらす不都合な結果
9. ある物の残念な結果の状態
10. ある予想外の事態の発生 
上記例文のすべてに共通する「してしまった」の意味はあるだろうか。
どうやらそれはないようだ。
それでも、上記例文の複数の場合に当てはまる要素はある。
行動なり、状況なりがもたらした結果が非意図的または予想外なものを表している例文は1,2,4,5,8,9,10。
そして、意図的行動だが、その行動に対する若干の後悔や、反省を含む場合が、3,6,7の例文。
例文の検証からわかることは、「してしまった」の意味を一義的に定義できないが、「してしまった」の前の状況記述から、それが意図的、希望的観測からなされたものではないことを含意するか、それとも、行動にあたって躊躇し、行動の後も若干の反省があったかどうかを日本人は自動的に判断しているということだろう。
さて、それでは今回の課題部分の「ノックしてしまいました」は、どの例文に状況が近いだろう。
キツネは夜遅くに平井さんの店を訪れている。通常ならば、その時間は営業時間ではないので、たとえ明かりがついていてもドアはノックしないだろう。
それにもかかわらず、どうしても直してもらいたいエプロンだったので、自分の希望を優先させたのだ。
つまり、上記例文でいえば、6.の例文の状況が一番近いと言える。
6.の例文の場合、単に「買った」なら、別段、普通のことだが、「買ってしまった」と表現することで、その品物がやや高いもので、余計な出費になったことが読み取れる。
そうなることが分かっているのに、自分の希望を優先させたことに若干の反省が含まれていることも読み取れる。
それでは、このように、普通なら、ある行動を慎むべき時に、自身の希望を優先させて、その行動に出た場合の表現は、英語でどのように言うかを検討する。