日本人の英文法24

学生時代手あれ、やり直しの学習によってであれ、獲得した文法知識が生かせるのは、文法知識を直接問う各種試験を除くと、書かれた英文の意味を理解するとき、つまり英文解釈のときだろう。
ある文が現在完了形である場合だと、次のような過程を経て、内容を理解する。
1. 過去分詞形が動作動詞のものだと、完了を表すから、「もう〜してしまった」「いま〜したところだ」という訳を当てはめる。結果を表す場合は、完了に含めて考えるから、特に別の訳は考えない。
2. 副詞にever, neverなどの頻度副詞がある場合は、経験を表すから、「今までに〜したことがある」という訳を当てはめる。
3. 過去分詞形が、状態動詞、またはbeen+進行形である場合は、継続を表すから、「今までずっと〜している」という訳を当てはめる。文末に期間を表すfor, sinceがある場合は、それぞれ「〜して…年(…ヶ月)になる」「…以来ずっと〜している」という訳にする。
英語を日本語に訳して、訳出された日本語により、元の英語の内容を理解するのは、日本人の場合、仕方のないことなのだが、型にはまった定訳での理解が、多くの場合、元の英語とのずれを生む。そして、完了形の場合だと、そのずれが甚だしくなってしまう。
しかし、学校で習った文法を絶対だと思っていると、このずれには気がつかないままとなる。
ところが、次のような英文に出会うと、その意味がどういうものなのか、混乱を生じる。

例文1 Hashimoto has advocated to stop the overlapping administration between Osaka Prefecture and Osaka City. (Oct. 22_Xinhua)
例文2 I have been with the ghost.
例文3 A Haffalump has been eating it!! (Winnie-the-Pooh)

混乱がどういうものかというと、
例文1の場合、完了を表しているようだが、完了の定型訳を使うとどうも妙な感じになる。Hashimotoが二重行政をどうにかしたいと発言したのは、この記事が出た10月22日よりずっと以前だ。それなのに現在完了形を使う理由がよくわからない。
例文2は問題なさそうだが、ある小説のこのせりふの場面にはghostはいない。せりふの主とghostは、このセリフが発せられる少し前に別れている。継続を表していると思われる文なのに、状態は継続していないのだ。
例文3も、例文2と事情が似ている。現在完了進行形は、過去のある時点から動作が現在にいたるまで続いている事を表し、定型訳は「…からずっと〜している」とするが、このセリフの発せられる時点で、Hafflumpはその現場にはいない。それなのになぜ現在完了進行形なのか。

こうした例は英語の小説などを読んでいると、時おり出て来る。そのたびに現在完了形って結局何?という疑問が湧いてくる。最も日常的に英文小説を読む日本人はほとんどいないから、こうした疑問を持つ日本人はまずいない。