なんばウォーキング

この記事のタイトル「なんばウォーキング」。大阪の難波付近を歩いて巡ることではない。「なんば歩き」と呼ばれる歩行法をちょっとしゃれて表現したまでのこと。

これをテーマに選んだのは前々回と前回の記事と関連があるから。

前回記事ではNHKの番組、「あしたが変わるトリセツショー」で取り上げられた健康保持のための速歩。速歩は早足で歩くことで太ももの得に前側に大きな負荷をかけ筋力増強を図るというもの。これを習慣化することでアンチエイジングの効果を得られるとの説明があった。

この速歩に限らず、私たちの歩き方はほとんどの人が歩くときに大きくか小さくはともかく、手を振りながら歩き、その振り方は脚と手が前後逆になっている。

ほとんどの人がこの歩き方だから、自然な歩き方だと勘違いしているが、この歩き方は明治以降、西欧文化流入とともに日本に入ってきたものだとする説がある。

私はこの説は正しいと思う。この説を含め「ナンバ歩き」に関して、ウィキペディアが参考になる。

長年河川そばや堤防を犬の散歩のため歩いていると、健康保持のためと思われるウォーキングやジョギングをしている人たちと出会う。年齢も服装も違うし、ウォーキングもそのスタイルはさまざま。

しかし共通することが一つある。それは足の運びと手の振りとの関係で、すべての人が「ナンバ」ではなく、西欧式であること。

しかし、この歩き方は犬連れの散歩だとずいぶんやりにくい。片手は引き綱でふさがれ、もう片一方は犬がするフンの処理のためのスコップを持っているから、大きく手を振ることはもちろん、手と足の動きが逆だと、たとえ小さな手の振りでも犬の鼻面を引っ張ってしまい、犬にはまことに嬉しくないことになる。

ということで、私の散歩は手をほとんど振らない歩き方になっている。

ナンパ歩きは手と足の運びが同じ方向という説明が上記ウィキペディアの説明にあるが、歩くときに手を含めた上体、もっと正確に言えば肩をほとんど動かさない歩き方のように思う。

ウィキペディアによれば、「ナンバ歩き」は訓練をしないと身につかないようなことが書いてあるが、私がこの歩き方に関心を持ち、練習したところ一週間も経たないうちにマスターできた。

普段の散歩で上体や肩をほとんど動かさない歩き方をしていたから、ナンバ歩きもすぐにマスターできたとも言えるが、一般の人でも、スーパーなどで買い物をし、手に買ったものを入れた袋やバッグを両手に持った場合、その状態で手を大きく振る人はいまい。

ナンバ歩きを試してみれば、意外に早くマスターできるかもしれない。

江戸時代に限らず、一般庶民が日常生活で、歩くのは移動のため。その際に手ぶらというのはあまりなかったに違いない。少なくとも片手には何か持ち、場合によっては天秤棒を肩からかけたり、旅の場合には、振り分け荷物を同じく肩からかけて長距離を移動するのが普通。

荷物を持ち運ぶ場合、中の荷物にダメージかあまりないのは肩をなるべく動かさない歩き方。動かす場合でも、脚の動きに合わせたナンバ歩きになっていたことは想像に難くない。

またこの歩き方は腰の筋肉や股関節への負担も軽く、流行の言葉で言うなら"sustanable"な歩き方といえる。

西欧式の歩き方は腰を大きくひねり、そのときの筋肉が元に戻ろうとする反動を前進方向への力、つまり推進力に利用する歩き方だ。

当然のことながら腰の筋肉、股関節に大きな負荷がかかり、トレーニングとしてはそれはそれでいいのだろうが、荷物を手で持ったり、肩からかけたりして長距離を移動するには全く適さない。

筋肉に大きな負荷をかけたいわゆる「筋トレ」なるものが盛んに喧伝されているが、私の考えでは、"sustanable exercise"としては長時間低負荷で「遅筋」を鍛えるのがよいと思っている。

もう一つ付け加えるなら、転倒防止やトレーニングによる筋断裂を避けるには、筋肉の柔軟性を増すためのストレッチが欠かせない。

しかし、40年以上に亘る河川の傍の遊歩道ウォーキングで出会った人の中でそうした別種のトレーニングを組み合わせて行っている人に出会ったことがない。

ウォーキングをしている人はいつ出会っても、いつもウォーキングだけ。ジョギングをしている人はいつもジョギングだ。

中には太極拳をしている人にも出会うが、これもそればかり。他のトレーニング法には全く目が向かない。

単一種目で鍛えられるのは当然ながら、体のさまざまな機能のうちのうちの限られたものだけ。

筋肉の場合で言えば、限られた方向に働く限られた種類の筋肉だけになる。筋トレでよく推奨されるスクワットは大腿四頭筋のそのうちの速筋だけ。それだけ鍛えたからといって、転倒防止や、ましてやアンチエイジングに効果があるとは思えない。 

ナンバ歩きはそうした固定観念を破る一つの方法かもしれないと思う。