新たな子犬たち40

子犬を4頭保護した次の日、朝早くから目が覚めた。ケージに入れておいた子犬たちの様子が気になっていたので、ゆっくりと寝ている気分ではなかった。
子犬たちは、どれも元気だった。低体温症で危なかった子犬も、他の子犬たちとケージのなかで、動き回っていた。昨日の状態がウソのような回復振りだった。
1頭の子犬を抱き上げて、口の中を調べた。犬歯がかなり長く伸びているが、他の乳歯は歯茎にその頭だけが見えている状態で、このことから、子犬たちは生後4週ほどではないかと思われた。
生後4週だとまだ、離乳期で、その時期にあったフードを買ってこなくてはならないが朝早い時間だとホームセンターもペットショップも開店していない。
保護した子犬たちのフードは後で買いに行くとして、子犬たちの母犬があの後どうしたかが気になっていたので、太陽が昇って辺りが明るくなった頃、昨日の現場に行ってみることにした。

  • 次の日の朝に見つけた子犬

現場は、市営の軟式野球用グラウンドのすぐ近くで、現場近くの駐車場には、朝早い時間にもかかわらず、もう何台もの車が駐車していて、グラウンドでは、準備体操を始めている人たちの姿があった。
グラウンドそばの歩道を抜けて、堤防に向かう道を行くと、植え込みのそばに1頭の子犬がいた。9月に保護した子犬の小夏にそっくりの毛色をしていた。
大きさなどから見て、あの母犬の子に違いない。やはり、私が帰った後、また川に飛び込んで、さらに一頭を助け出したのだ。しかし、母犬の姿はあたりに見えなかった。
その子犬を持参したカゴに収容した。まだ他にも助け出された子犬がいるかもしれない。あたりをさらに探すことにした。
歩道を進んでいくと、堤防に出る。堤防で、体操をしている年配の男性がいたので、辺りで、子犬を見かけなかったかと聞いてみた。
小さいのが一匹、そこの植え込みのところにいたと言うので、カゴの中の子犬を見せたところ、ああ、それだと言う。母犬は、その男性の姿を見て、逃げてしまったそうだ。
その子犬以外には、見ていないとその男性は言ったが、念のため、あたりを探索してみた。

  • 別の母犬の子犬

昨日、四頭の子犬がいたのは、少年野球用グランドの外野フェンスすぐ外側だった。そのあたりも見て回ったが、他には子犬はいそうにもなかった。
しかし、念には念を入れて、堤防沿いにもう少し足を伸ばしてみたところ、野球場公園の植木を剪定した枝の束が山積みされている陰に、子犬を救出せずに歩み去った母犬の姿があった。
私が近づいても逃げようとしない。その母犬の体近くから、選定した枝の束に向かって動くものが見えた。もしやと思い、あわてて駆け寄ると、母犬が激しく吠え立てたが、それにはかまわず、さらに近づいてみると、さっき保護した子犬よりずっと小さい子犬が一頭、小枝の束の陰に隠れようともがいていた。
激しく吼える母犬を尻目に、子犬に近づくと、母犬は逃げ出した。小枝の束にもぐりこもうとする子犬の尻尾をつかんで引きずり出した。
暗くなってから、母犬は子犬の救助に向かったのだろう。しかし助かったのはこの一頭だけだったようだ。