食塩禁断症状

NHK特集、「病の起源・脳卒中」を見た。脳卒中の発症に大きく関わっているのが高血圧。さらに、この高血圧を引き起こす大きな原因が食塩の過剰摂取にあるという。
この辺りまでの知識なら、多くの人が持っているに違いない。高血圧は脳卒中のリスクを高めるということで、減塩が推奨されている。
私は10代の頃に腎臓を悪くして、それ以来数十年、減塩を心がけているが、食塩の摂取量を厚生省の推奨ラインの一日当り10gというのを実行するのはなかなか難しい。
減塩を難しくしているのが、私の場合、もともと塩辛いものが好きだということもあって、なんにでも醤油をジャブジャブかけてしまうという習慣だ。
一応減塩醤油を使っているが、大量にかけてしまえば、減塩にはつながらない。
しかし、この癖、なかなか直すのが難しい。このことに関して、以前から思っていることがある。
それは、人間には、食塩の摂取量をどんどん増やしてしまう傾向があるのではないかということだ。
日本人の場合、血圧が年齢とともに上昇するのが常識となっているが、アフリカ原住民であるピグミー族にはそうした傾向は見られない。
番組では、このことに関して、動物実験ではあるが、食塩をたくさん含んだ餌をある一定期間与えた後、食塩を含まない餌に切り替えると、麻薬の禁断症状の場合と同じように、脳のある一定の場所に変化が生じたという例を紹介していた。
これはきっと人間にも当てはまるのだろう。食塩をある一定量含む食事に慣れてしまった人間にとって、その量に達していない食事をしても脳の一部が欲求不満に陥ってしまうのだ。
そのため、年齢とともに、だんだんと食塩に対する欲求度が増していき、知らず知らずのうちに食塩の摂取量が増えていく。だから、年齢とともに、血圧も上昇する一方なのだ。
一方、原始時代と変わらぬ食生活を続けるピグミー族の食べ物に含まれる食塩の量はごくわずか。食べるものも、一生を通じてほとんど同じ。そのため、年齢が上がるにつれて血圧が上昇するということもない。
文明世界に暮らす人間にとって、減塩が難しいのは、現実に手に入る食材なり、出来合いの惣菜なり、外食などで、どれにどれだけの食塩が含まれているか、ほとんど知るすべがないからだ。
わからないから、自分の味の好みで選ぶことになる。これでは食塩の摂取に歯止めがかかるはずがない。
つまるところ、高血圧、そしてそれが引き金になる脳卒中は文明病の一種だということだ。