見ざる言わざる3

日本人社会で圧倒的多数派の楽観バイアス人間は、どのような事態であれ根拠のない楽観を持つだけでなく、現実にそこにある危険に対しても鈍感だ。
ことわざに「前車の覆るは後車の戒め」というのがある。先人の失敗は、後の人の教訓になるということのたとえなのだが、日本ではこのことわざは意味を成さないようだ。
他所、他人の失敗を教訓に、自己の改めるべきところを改めることが出来ない。
先の福岡の病院の院長は、札幌市北区認知症グループホームで起きた火災のことはまったく気がつかなかったのだろうか。
それは2010年3月に起きた火災で、入居者7人が焼死するという悲惨な結果を生んでいる。
防火設備の不備、スプリンクラーの未設置、火災の際の避難訓練の未実施など、今回の火災と共通点が多い。
ホームでの火事のニュースはテレビなどのニュースで聞いていたとしても、それを自分の病院にも起き得ることだとは思わなかったのだろう。
今、そこにある危機にもまったく気がつかない能天気ぶりは楽観バイアス派の得意技だろうが、日本人の場合、圧倒的大多数が楽観バイアス派だから、ほとんど誰も胚胎する危険に目を向けることがない。
また、少数派の悲観バイアス派はこれに気がついても、そのことを口にすることがない。
かくして危険はいつもで経っても解消されずにそのままになる。
今そこにある危険に鈍感ということで思い出すのが、福知山の花火大会での事故だ。
事故原因を作った屋台の店主は、ガソリンタンクのふたが勝手に外れて、ガソリンが撒き散らされたと証言しているようだが、ガソリンタンクを火の近くや、発熱して温度が高くなる発電機の近くに置くことがすでに間違っているのだ。
常温でもガソリンは気化するから、この気化したガソリンに火花が飛べば、それだけで爆発する。
そうした危険性を持つガソリンが入ったタンクをこの店主は、屋台の明かりをともすための発電機のそばにおいていた。
発電機は、ガソリンを燃料とするから当然のことのようだが、発電機は車のエンジンと同じで、運転を続けると高温になる。
高温になる発電機のそばにガソリンの入ったタンクを置けば、熱で温められたガソリンがどうなるかは簡単に想像できるはずなのだが、この想像が出来なかったようだ。