からだのこと4

鎌状赤血球というのを聞いたことがあるだろうか。
赤血球は通常丸い形をしているが、この赤血球が円形ではなく鎌の形になっているもので、この形質は劣性遺伝をする。
劣性遺伝だから、正常な赤血球を作る形質とのヘテロ結合では、正常赤血球と鎌状赤血球が混在し、健康上の異常は出現しない。
しかし、ホモ接合の場合は鎌状赤血球だけとなり、健康上の様々な問題を引き起こす。
生存するうえでは、決定的に不利な症状を引き起こすにもかかわらず、この劣性遺伝子は主にアフリカの黒人の一部に受け継がれている。
なぜかというと、熱帯地域で猛威を振るうマラリア感染において、赤血球のかなりの部分が鎌状である人のほうが生存率が高いからだ。
環境条件が違えば、生存のために有利な遺伝的形質も異なってくる。
日本人の多くが働きの悪いインシュリンを持っているというのも、これと同じかもしれない。
日本人の働きの悪いインシュリンに関することは、私個人の推測に過ぎないが、働きの悪い人が多いことは厳然たる事実だ。
厄介なのは、それを本人が全く自覚していないことだ。
インシュリンに関してはインスリン(IRI)検査というのがあるが、これは通常の健康診断の検査項目ではない。
通常の血糖値検査で異常が見られない限り、この検査も行われないから、血糖値スパイクのように、検査に引っかからない異常の場合は、本人が自分のインシュリン分泌能力が劣っていることを知るすべがない。
通常の血糖値検査で異常が見られた時にはもう手遅れで、一人前の糖尿病患者の仲間入りというわけだ。
先のNHKの番組で、参加ドクターの一人が、家庭で自分で血糖値を常時、モニターすることを勧めていた。
現在、血圧に関しては、一日のうちに何回も測定を行うことが大事ということが一般にも知られるようになり、測定器を備えている家庭も多いだろう。
それと同じように、家庭で使える血糖値測定器がすでに市販されているそうだ。
これを使って、特に、食後の血糖値を何度も測定することで、自分が血糖値スパイクになっているかどうかが簡単にわかるという。
しかし、こうした測定器はただではないから、それを買ってまで測定してみようという人はほとんどいないだろう。
誰しも、自分にとって不利なことは、知らないでおこうという心理が働く。とりわけ日本人には、楽観バイアスが強く働き、何の根拠もない楽観を多くの人が抱きがちだ。
番組では、病院での検査や、機器による測定ではなく、血糖値バイアスだとわかるような自覚症状はないかという質問が視聴者から寄せられた。
自覚症状があるとなれば、根拠のない楽観も吹き飛ぶというものだ。