8月の別れ 5

ピーコタンを保護して二か月近い6月下旬ともなると夜間の温度もそれほど下がらなくなったし、二羽も成長したので鳥かごに毛布を掛けることはしなくなった。
このころから、練り餌に細かい砂を混ぜて与えるようにした。エサに砂を混ぜるのは、これがスズメなどのように、穀類を主にエサにする小鳥の場合、食べた穀類を喉にあるスナズリという器官で食べた穀類を細かくすりつぶすのに必要だからだ。
自然の中で暮らしている場合、食べたものを食べる場合に、泥や土も一緒に食べるから、スナズリに自然と土の成分がたまってくる。
しかし、人間が世話をすると、意図的にエサに砂を混ぜないとスナズリは空っぽのまま。これだと食べた穀類が十分にすりつぶされず、小鳥が栄養失調になってしまう。
スズメにはとりわけこれが顕著なようで、砂を与えるのはそのためだ。
その一方で、練り餌以外にも、自分でえさを食べられるように、部屋のあちこちに殻付きのアワを撒いておいた。
もうこのころには、朝一でかごから出して、そのまま部屋の中を自由に飛べるようにしていた。外に放した場合、エサは自分で見つけなければならない、
そうした場合に備えて、部屋のあちこちにエサになる穀類を撒いておく。
しかし、あちこちに撒いておいたアワを食べる様子はなかった。新しい食材は親が食べて見本を示す必要がある場合が多い。しかし人間である私が手本を示すことができない。
スズメなどの野鳥を保護した場合の一つの難関なのだ。