8月の別れ 9

保護して育てた子スズメを飛べるようになったからといって外に放しても、生きていける可能性は低いかもしれない。
それなのになぜ放すかというと、可能性が低くても、外で生きるチャンスを与えず、部屋の中で飼い続けるというのは、やはりよくないと思うからだ。
今回保護した子スズメたちは、巣立ち後に保護したから、もう人間を自分の親だと思うことはない。
私にはすぐ懐いたものの、同じスズメ仲間ができ、自分でえさを食べるようになったら、三羽とも私の方には近づかなくなったから、外の世界の方が彼らには合っている。
それと、以前に記事にしたことがあるが、同じスズメの若鳥や幼鳥に対して、結構おせっかいというか、親切なスズメがいる。
このことを知ってから、保護した子スズメを外に放した場合の生き残れるチャンスは意外と大きいのかもしれないと思うようになったことが放鳥する大きな理由だ。
以前の記事は次の通り。
http://d.hatena.ne.jp/eriosyce/20110313
さて、ピーコタンが飛び去って、後に残ったのがチュンチュン。南側の窓を大きく開けたままにしても、結局昼過ぎまで外に飛び出すことはなかった。
それで、次の日の8月9日の朝から、もう一度窓を開けて外に飛び出すかどうか確かめることにした。
そして迎えた次の日の朝。前日と同じように南の窓を開けるために部屋に行くと、チュンチュンが大きな鳴き声を上げていた。
つい数日前まで、3羽で暮らしていたのに、この日の朝は自分だけ。やはり寂しくなったのだろう。しきりに鳴いて仲間の姿を求めて飛び回っていた。
そこで、南の窓を大きく開け放してみたが、やはり前日と同じようにすぐに外に飛び出すことはなかった。
今日も外に飛び出ないのなら、このまま部屋で飼い続けようかと思いかけたとき、外からスズメの鳴き声が聞こえてきた。
これは聞きつけたチュンチュンはその声のする方向に躊躇なく向かっていった。
チュンチュンは今回保護した三羽の中で一番飛ぶのが上手だ。
窓を飛び出し、一気に空に向かって飛び去り、あっという間に見えなくなった。
感傷に浸る間もないあっけない幕切れだった。
部屋の中にはもう飛び回るスズメの姿はなく、シンと静まり返っている。
ひょっとしたら、エサが見つからず、エサを求めてこの部屋に帰ってくるかもと思い、南側の窓は夕方まで開けたままにしておいた。
夕方になって、部屋に入ってみたが、部屋は静まり返ったままだった。