8月の別れ 3

保護してから一週間近く、ピーコタンはすっかり懐いて、差し餌もずいぶん楽になっていた。
夕方になって、犬の散歩の時間、あるお宅の前を通りかかると、子スズメが親を求める鳴き声が聞こえてきた。
そのお宅の門から中をうかがうと、門の近くに置かれていた松の盆栽の枝に子スズメが止まっているのが見えた。近くに親鳥の姿はない。
犬の散歩は取りやめて、その子スズメを保護することにした。一羽保護するのも二羽保護するのも大差はない。
犬を連れて自宅に戻り、そのお宅の門のところまで行ってみると、相変わらず子スズメは同じ場所にいた。
親鳥はやはり姿を見せない。そこで呼び鈴を押して家の人に出てきてもらった。
事情を説明して、子スズメを保護するつもりだというと、昨日も一羽の子スズメが庭をうろついていて、その子スズメはカラスにさらわれたとのこと。
可哀そうにと思っていたらしく、どうぞと庭に招き入れてくれた。
ピーコタンの時は、捕虫網がたまたまあったので、簡単に捕まえられたが、今回はそれがない。
素手で子スズメを捕まえるのは難しい。何か手ごろなものはないかと庭を見回すと、麦わら帽子が都合よく目についた。
そこでその麦わら帽子を借りて、子スズメを捕まえた。
帽子ごと家に連れて帰って、ピーコタンの時と同じように、小さな箱に入れて小雀が落ち着くのを待った。
しばらくして子スズメが落ち着いたころに、ヒナ用の練り餌で強制給餌。
からだをチェックしてみると、ピーコタンより少し幼い。足に異常はなく、なぜ親が見捨てたのかよくわからない。
二羽目の子スズメにはチュンチュンという名前を付けた。
一羽目に名前を付けたのだから二羽目にも名前がいると思ったからだ。