ワンコ屋敷7

河川敷で暮らしていた子犬たちが捕獲員に捕まったことは、一部には私に責任があるように思った。
あの日も私が川岸の遊歩道を通りかかる時間だというので、捕獲員だとは思わずに草むらから顔出したに違いない。なまじ人なれしていたため、捕獲されたのだ。
そして、人なれしていたのは、間違いなく私が毎日のように餌を与えていたことが原因だ。
ただ、翻って考えると、私が子犬たちを捕まえることの出来るチャンスは、最初に子犬たちがかたまって寝ていたあの寒い朝だけだった。
まだ足取りもしっかりしない子犬だったし、堤防の上という隠れ場所もないところにいたのだから。

  • 子犬たちが暮らしていた草むら


見つけたそのときすぐに全部ではなくとも、一匹でも二匹でもうちに連れ帰っていれば、あんな結末を迎えなくても済んだと思ったが、これは後知恵というものだ。
犬の散歩の途中、野犬が生んだと思われる子犬がかたまって寝ているところに遭遇して、その瞬間にたとえ一匹でも捕まえて、うちに連れ帰る決心は出来ないほうが普通だ。
理性は、お前に責任はないよといってくれるが、子犬たちが捕獲された場面は、目の奥に焼きつき、そのとき子犬が上げた悲鳴は、耳の奥にこびりつき、いつまでたっても消えることはなかった。