タロ・ジロ・サブ4

タロ、ジロの兄弟たちは、その後、散歩に行くたびに、川の中州で、一緒にいるところを見かけるようになった。
天気のいい日は、子犬たちはかたまって、日当たりのいい場所で日向ぼっこ。
すぐ捕まえられそうな距離まで近づくことは出来るが、いざ捕まえようとするとさっと身を翻して逃げてしまう。そんなことを繰り返していくうち、2009年が暮れた。
明けて2010年の元旦。年賀状を出した帰りに、ヨシの散歩をしようと、ヨシを連れてポストのある場所まで行った。家への帰り道を少しそれて、河川敷の遊歩道へと向かった。
いつもどおりの川下への散歩コースを辿り、子犬たちがいる場所に近づくと、その近くの遊歩道を歩いている人が、何かを遊歩道の上に撒き散らした。
すると、それまで、川の中州にいたと思われる例の子犬たちが、遊歩道まで出てきて、撒き散らかされた何かを食べ始めた。
遊歩道を散歩する人の中に、散歩のついでに餌を与える人がいるらしい。近づいてみると、遊歩道上にパンが散らばっており、子犬たちはそれを食べるのに夢中だった。
ちょうど子犬たちの真後ろからわたしが近づく形になり、子犬たちはわたしの接近に気づかない。
このチャンスを逃がす手はないと思い、自転車から降り、子犬たちに気づかれないように接近した。
1mほどまで近づいたところで、4匹の内、3匹はわたしの接近に気づいて、蜘蛛の子を散らすように中州の草むらのほうに逃げてしまった。
しかし、一匹だけは食べるのに夢中で、わたしが間近に迫るまでまったく気がつかなかった。

  • サブ(2010年1月2日撮影)


中州の草むらのほうに逃げられては、捕まらなくなる。中州への退路を断つ形で近づき、手が届きかけたところで、その子犬はやっとわたしに気がついた。
中州のほうには逃げられないと分かって、土手の斜面を登ろうとしたが、まだすばやく斜面を登るだけの体力がないのか、斜面の途中で立ち往生。
そこを後ろから抱き上げると、甲高い声を立てたが、激しく暴れはしなかった。予想外の僥倖により3匹目の捕獲に成功した。
その子がサブだった。タロやジロより明らかに体格が大きく、抱き上げたときの重みもあった。同時に生まれた兄弟の中で、一番大きい子のようだった。