ヨシとコロク3

ヨシが最初にうちに来たのは、もう10年以上前のことだが、そのときのことは割合はっきり覚えている。
ヨシは、わたしの母親の知り合いが、そのまた知り合いから頼まれて、引き取り先を探していた犬だった。
ヨシの母親が望まれない妊娠をしてしまい、生まれた子犬の一頭だということだった。
母犬を飼っていたうちでは、生まれた子犬を飼う余裕はないので、里親を探していたのだ。
そのとき家には、ユキとチャゲという名の先住犬がいて、どちらもかなりの年齢になっていた。ユキとチャゲは親子で、ユキがチャゲの母親だった。
近い将来、二頭とも同じ時期にいなくなることは明白で、若い元気な犬が欲しいと思っていたので、引取りの依頼があったとき、どんな犬かも分からないまま、母親が知り合いのうちに預けられていたヨシをつれて帰ってきた。
生まれて四ヶ月以上経っていたヨシは、もうかなり大きくなっていて、子犬という印象ではなかった。
眉間にシワを寄せた顔をしていて、ちっとも愛想がよくない。それまで、人にかわいがられていなかったのかもしれない。

  • ヨシ(2003年5月撮影)


家で暮らし始めた当初は、先住犬の二頭にいつもおびえて、小さくなっていた。
ユキとチャゲがいなくなってからも、眉間しわはなくならず、それから何年か経って、ようやく安心したのか、眉間のしわも取れて、穏やかな表情になった。
映像は、7年前のものだが、このころの表情は、もう穏やかになっている。