見えざる闇4

日本の社会に厳然と存在するブラックホールのような世界。そこから情報、あるいはその世界に関する情報は、外の世界ではまず得られない。
1984年の事件の実行犯たちが、ブラックホールの深々とした暗闇に韜晦(とうかい)したか、またはその闇を通って、警察の手の届かない世界に逃げてしまったとしたら、忽然と姿を消したのも頷ける。
この事件は、日本中を巻き込み、警察の総力を挙げたといってもいい捜査にもかかわらず、犯人逮捕すら出来なかった。このことは、日本の警察の捜査能力に日本人が疑問を抱く契機となった。
未解決のままになる事件の数がこの事件の後、急激に増えたような気がするのだが、警察の解決能力に対する疑問がそうさせるのかもしれない。
また、一応の解決を見たようで、犯罪の本質そのものはうやむやのままという事件も増えた気がする。そうした事件では、必ずといっていいほど、背後に見えない暗闇が広がっている。

1984年の事件と、2009年の出来事は直接的には何の関係もないだろう。しかし、それぞれの背後には、どちらも底知れない闇が広がっているように感じる。
二つの出来事が起こった場所、実は物理的には極めて近い場所だ。
最初の画像の、欄干に吊り下げられたポスターの向こうに見えるのが、1984年の事件の発端となった水防倉庫だ。
直線距離にして100mも離れていない。川のほぼ対岸に位置する二つの事件現場。
日が落ちると、誰一人この場所には近づかない。時間が過ぎるとともに深まり行く暗闇だけがあたりを支配する。
新幹線の基地を照らす照明に、対岸にある水防倉庫がぼんやりと浮かぶこの場所に、真夜中にやってきた両事件の犯人たち。そして、彼らはまったく光を通さない暗闇に韜晦したままだ。