見えざる闇3

犯罪捜査を積極的に行わない領域が存在するということになると、その領域に関わる犯罪は、解決を見ない場合が多くなると考えられる。
未解決のまま闇に葬られる事件は、実は相当たくさんあるのではと思えてくる。
実際、2009年の出来事に関して、捜査の進展があった様子はない。そもそも事件として捜査しているのかも怪しい。しかるべき時間の経過の後、ひそかに未解決事件ファイルに収まってしまうのだろう。
明白に犯罪の事実がありながら、未解決に終わっている数々の事件も、背後には社会のブラックホールが存在していたのかもしれない。
未解決事件の中でも抜きん出て有名な事件が1984年の出来事だ。
菓子メーカーの社長が自宅から拉致され、とある水防倉庫に監禁された。自宅に身代金要求の連絡が入り、現金受け渡し場所が指定されたが、犯人は現場には現れなかった。
その後、事件は新たな展開を見せ、何度も犯人逮捕の機会があったにもかかわらず、結局犯人グループの誰一人逮捕されなかった。
つい最近、NHKがドキュメンタリーを交えたこの事件の再現ドラマを放送した。
しかしあのドラマでも、犯人グループの特徴を示すと思われる部分には、まったく言及がなかった。事件当初には、数々の揣摩臆測が飛び交い、情報も錯綜していたが、はっきりいえることが一つある。
それは、社長が監禁された水防倉庫は、その当時、ごく限られた人間しかその存在を知らなかったはずで、倉庫に到る道は、これも地元の人間でなければ知らないはずなのだ。
然るに、拉致そのものは遠く離れた西宮で起こっている。
この事件の実行犯は、この監禁場所の情報をその近辺に住む人間から得たに違いない。
実行犯のグループは5人ほどとされているが、社長監禁の場所や、その後の現金受け渡し場所などの情報は、まったく別の人間たちが実行犯グループに提供したと思える。
事件に関わった人間は、犯人グループの5人以外にもかなり沢山いたのではないか。そうだとすると、その人たちはいったいどこに消えたのか。