澱みのその下1

家のすぐ近くを流れる川の河川敷に、毎日のように犬の散歩に出かける。
最近は、自宅からその川の下流に向かって散歩するのが常だが、以前は、川の上流方向によく出かけた。
その散歩コースを、ポメラニアンのヒナとコロクを連れて、片道3kmほどを行き、そしてまた同じコースを帰って来るのがほぼ毎日の日課だった。
しかし、ヒナが死んだ後は、この散歩コースを辿るのが辛く、川の上流への散歩はほんの500mぐらいしか行かなくなった。
昨日の土曜日、この川の上流散歩コースの折り返しの場所近くで、水難事故があった。成人男性が一人亡くなり、中学生一人が意識不明の重体だという。
テレビで事故のことを知った時に、驚きはほとんどなかった。むしろ、ああやはり起こったかというのが正直な感想だ。
現場は、川を横切る形で、コンクリートブロックが川底に置かれてあり、人工の浅瀬になっている。
川の水量が少ないときには、このコンクリートブロックが水面に顔を出し、対岸へ歩いて渡ることもできる。
この川には、事故現場と同じように、堰があったり、川底に飛び石が置かれたりして、水量の低い時には、対岸に歩いてわたれる場所がいくつもある。
事故は、中学生と小学生何人かが、この浅瀬になった場所で水遊びの最中に起こったようだ。遊んでいたうちの何人かが川に落ちてしまったのだ。
事故を目撃した男性が飛び込んで助けようとして、自分が溺れてしまった。
水遊びをしていた小学生、中学生は自分たちの行為がどれほど危険に満ちたものであるか、その認識は、多分、ほとんどなかったものと思う。
そして、亡くなった男性も、川の持つ危険についてどれほど認識していたであろうか。
たまたまジョギング中に事故に遭遇したらしいが、多分この日以外もよくやって来ていたであろう、この川に潜む危険性を、多分何も感じていなかったに違いない。