澱みのその下で3

覗き込んだ真下のコンクリートの斜面に、小さな花束があった。青色と白色の花を取り混ぜて束ねたものが、コンクリートブロックの凹んだ部分に置かれていた。
花はすでに色も褪せ、しおれていた。そこに置かれて、少なくとも一週間は経っているように見えた。
川の深みのほうに目を遣ると、覗き込んだあたりから、やや下流の橋の橋脚辺りまでがそれより上流よりも深くなっていて、川岸から見て、1m位の水深がありそうだった。
ふと上流の方向を見ると、川の流れが急で、白波が立っている場所があった。
その場所の近くまで近づいてみると、そこは中洲が川岸近くまで迫っていて、その中州に渡れるようにするためだろうか、川底には大きな石がいくつも置いてあった。古くからある堰のなのかもしれない。
その場所は水深が浅くなっていて、その分、川の流れが早い。流れの速い浅瀬の向こう側の中洲には、草が丈高く茂っていた。
その場所にしばらく佇んでいると、一つのイメージが浮かんできた。
小さな男の子が数人、河川敷に降りる堤防の階段を駆け下り、川岸のほうに走っていく。浅瀬の石を一つ一つ踏んで、子供たちは次々と中州の草むらに姿を消していく。
最後の一人が仲間から取り残されまいと焦ったせいか、浅瀬の石を踏み外し、倒れ、川に流される。
叫び声をあげるが、体は一気に流れの先にある深みへと持っていかれる。仲間が叫び声を聞きつけて、戻ってくるが、深みにはまった友達をどうすることもできない。
頭に浮かんだイメージはあくまで想像に過ぎない。本当にそれに近いことが起こったかどうかは解らないが、起こっても不思議ではない条件がそろった場所であることに間違いはなかった。