サボテンの首2

玄関ホールの床、 鉢の陰の目立たないところに転がっているものを拾い上げてみると、思ったとおり、それは小さいサボテンの頭の部分だった。
鉢の頭がなくなっている仔サボと照合した結果、ほぼ、切断面が符合したので、落ちていたのが、仔サボの頭部であると考えられた。
ミステリーファンの私は、こうした場合、なぜこうした事態が発生したかを推理してしまう。
推理は次のようなものだった。
1. これは事故か、それとも意図的なものか。
現場は、病院の待合だ。意図的なものだとすれば、あらかじめナイフ等を持参しなければ、刺だらけのサボテンをうまく切り取ることはできない。
そこまでして、切り取ったサボテンの頭部をそのまま現場に放置した理由が不明。よって、これは事故によるものだと考えられる。
2. 事故だとして、それは、誰が引き起こしたものか。
玄関ホールは、待合室がいっぱいの時に患者の付き添いの人が、時たま使うというのがほとんどだ。
私が医院にやってきた前日、患者の付き添いである人が医院にやってきた。
待合室が患者でいっぱいなので、付き添いの人は遠慮して、玄関ホールに置いてある椅子に腰をかけて待っていた。付き添ってきた患者の名前が呼ばれたので、あわてて立ち上がったところ、足元のサボテンに履物が当たって、仔サボの一つが折れて吹っ飛んだ。
それに気がついたその人は、犯跡を隠すため、取れたサボテンの頭を鉢の陰に隠すように、足でつついて移動させた。
以上が私の推理だ。この推理が当たっているかはともかく、落ちていたサボテンの頭をどうするか。放置すれば枯れることは間違いない。
というわけで、持って帰ることにした。誰も気にかけていないサボテンのそのまた仔サボのちぎれた頭。そんなものでも、挿し木にすれば活着して、大きく育つ可能性もある。
医院での診察を終えて、帰る際に、転がっていたサボテンの頭を手のひらに乗せて、駐車場に向かった。
画像の中の、細く長い刺をしたサボテンがその時のサボテンの頭。挿し木した後すっかり忘れていたが、元気に育っている。
花が咲くのは、まだ先のことだが、丈夫そうなので、何年かすれば、花が咲くことだろう。