新たな子犬たち2013-1-5

コンテナの横を通る時、その奥から聞こえてくる音は、子犬の鳴き声だとはっきりわかった。
コンテナのさらに奥にあったのは、テレビCMに出てくるような、スチール製の物置。
戸は開いたままになっていた。物置の中には、様々なガラクタが散らばっていた。その中に古いソファがあり、二匹の子犬がそのソファの上、もう二匹がソファの周りに寝そべっていた。
鳴き声をあげていたのは、それらの4匹ではなく、物置が置かれていた木の枠組みのすき間に入り込んでいた一匹だった。
物置には、餌入れとして使っていると思われる、アルミか何かの金属製の皿がいくつかあった。明らかに、誰かがこの子犬たちに餌を与えている。
そのためだろう、突然現れた私に対して、この子犬たちは逃げようとしなかった。日常的に人間を見ている証拠だ。
さて、この子犬たちをどうするか。このままここに置いて行くべきか。躊躇は一瞬だった。
誰が餌を与えているのかはわからなかったが、そのままにしておいて、この子犬たちが十分な世話を受けられるとは思えなかった。
何しろ、現場は日中にしか人が出入りをしない、作業所近くの空きスペースで、囲いも何もない、資材置き場のようなところだ。
子犬たちが大きくなれば、野犬化することは目に見えている。幸い、日曜日に積み込んだ子犬を収容するためのカゴはそのまま後部座席にある。
車に戻って、カゴを持ってきて、手早く、物置にいた4匹をカゴに入れた。
物置の下にもぐりこんでしまっていた一匹を捕まえるのはあきらめた。手が届かなかったし、棒などを探して手間取っているうちに、誰かに見咎められることもありうる。
4匹を入れたカゴを後部座席に積み込むと、急いで車を発進させた。車を発進させてからしばらく行ったあたりで、作業所に向かうトラックとすれ違ったが、それ以外は、人にも車にもすれ違うこともなく、数百メートルを進んで、幹線道路に出た。
いつもなら、河原の草むらで子犬を産むはずの野犬が、わざわざ人の出入りのある物置で子犬を産んだのだろうか。
そんなことを考えながら、家に向かって車を走らせた。