日本人の英作文33

(7)の例文については、「声をかけた相手に近づくことからcomeを使います」という説明。
これが(26)(27)の例文では、「話し手と聞き手のいるところ(中心)から離れるので、goでよいことになります」と、説明の仕方を変えている。
goとcomeの使い分けを、中心への接近の場合は、comeを使い、離れる場合はgoを使うというのが、この本の説明のしかただ。
運動の方向が真逆だから、ある状況の時に、一方が成り立てば、他方が成り立つはずがない。
数学的に言えば、正の数でもあり、負の数でもある数字は存在しないのと同じだ。
然るに、(7)の状況と、(26)(27)の状況はどう見ても同じなのに、使われている語はcomeとgoに分かれている。
comeの項の説明のところで、「中心」とは何かの定義があったので、これを再掲する。

(1) comeを使う場合
  a. 中心(声のする方向・誘われた方向に)近づく: 行く、参る
  b. 中心(話し相手の方に)近づく: 来い、来る、おいで
  c. 中心(相手先に)近づいて到着する: きた

(26)(27)の場合、(1)aの場合に相当するから、使う動詞はcomeでなくてはならないはずだ。
goの項の説明では、goを使う場合を「中心(話し手・聞き手がいるところ)から離れる」としているが、(26)(27)の状況の場合、話し手は聞き手に同行しようというのだから、離れては行かない。
「中心」という考え方を使って、comeとgoの使い分けを他の場合はうまく説明できているが、同行の場合、ある状況ではcomeもgoも使えるということは説明がついていない。
説明がうまく行かない理由は、一つの原理だけで、comeとgoの使い分けを説明しようとしたことだ。
comeとgoが、ちょうど正の数と負の数のように、同時成り立たない、対立項の場合、具体的に言うと、独立した二つの行動主体、つまり話し手と聞き手の両方がいて、その距離関係が接近関係か、離脱関係かを表す必要がある場合に、comeとgoが対立項になるのであって、そうでない場合には適用されないということなのだ。
もう少しわかりやすい説明は次回に。