comeとgo 再び#9

comeとgoの本編に戻る。
状況1は離れた場所にいる二人が対話後、一方が移動することにして、もう一方に近づく場合とそれ以外の場合によって、comeとgoの使い分けが決まる。
状況2は同じ場所にいる二人が対話後、連れ立って移動を開始する場合の細かい状況の違いによって、comeとgoの使い分けが決まる。
状況1のような場合は、現実にはそれほど頻度は高くない。状況2はそれに比べると頻度が高くなる。
しかし、comeとgoの使い分けが問題になる場合は、状況1でも状況2でもない、それ以外の状況のほうがもっと多い。
そうした場合のいくつかを、状況3としてまとめて記してみる。括弧にはcomeまたはgoを入れる。時制は適宜変わっている。
○状況3-a
次の文は、George OrwellのNineteen eighty-fourの序文、著者の紹介のページの記述だ。
George Orwell was born in India in 1903, and was educated at Eaton. From 1922 to 1928 he served in Burma in the Indian Imperial Police. For the next two years he lived in Paris, and then (・・・) to England as a school-teacher. Later he worked in a bookshop. In 1937 he (・・・) to Spain to fight for the Republicans and was wounded.
最初の括弧にはcame、次の括弧にはwentが入る。
これは、George Orwellが英国人で、活動の拠点が英国だったので、そこを原点0としているから。
その原点0に近づく動作はcomeで、離れる動作がgoで表現される。
もし、最初の括弧にwentを入れると、イギリスではない別の場所を原点0としていることになる。たとえば、最初の括弧の前にあるパリまたは、インドを基点とした表現になる。
○状況3-b
Wizard of Ozからの抜粋。ドロシー一行がようやくエメラルドシティの入り口にたどり着く場面。
As they walked on, the green glow became brighter and brighter, and it seemed that at last they were nearing the end of their travels. Yet it was afternoon before they (・・・) to the great wall that surrounded the City.
この物語はドロシーと、お供が連れ立ってオズのいるエメラルドシティを目指すという形で進行する。場面はその旅の終わりに近い部分。
この場合だと、状況3-aのように、原点0に相当する場所はないから、場面ごとにその場所を基点とする表現が普通。そして、その場所に「やって来た」のだから、cameが入る。
ここをwentとすると、物語のこれまでに出てきたどこかが、原点0になっていることになり、この物語だと、ドロシーの家のあるカンザスを原点0にするしかない。
しかし、それだと、お供たちにとってもカンザスが戻るべき場所となってしまうので、ちょっとへんなことになる。
○状況3-c
ある公開質問サイトへの質問と回答。
Question: Why Do Chirping Crickets Become Quiet When You Move?

Answer:I know what you mean, Lawrence! Last summer, I was trying to collect some crickets for a program I was presenting at a local library. The crickets were chirping loudly underneath a piece of black plastic I had put down to solarize some weeds in a landscape bed. I figured they would be an easy catch. But every time I (・・・) close to the plastic, they (・・・) silent!
最初の括弧はcameが入り、次の括弧にはwentが入る。
最初の括弧は状況1の場合と同じで、対話の相手ではないが、自分が到達しようとしている地点を基点にした表現。
その場所に近づく動作なので、cameが入る。ちなみに"come close to"という表現はあっても、"go close to"という表現はしない。
日本語だったら「近づいて行く」と表現することができるので注意が必要。
次の括弧は「go+状態を表す形容詞」の一例。「come+状態を表す形容詞」で表現する場合もあり、前者は通常の状態からの逸脱を表し、後者は通常の状態へ戻るか、自分にとって都合の良い状態になることを表す。
それぞれ、使われる形容詞は決まっていて、"go bad"とか、"come true"という表現はあっても、"come bad"とか、"go true"とかはいわない。
silentはネット検索すると、"go silent"で、「黙り込む」とか「静かになる」の意味で用いて、"come silent"とはいわないようだ。