にっちもさっちも


家の周囲の道路はかなり狭い。西側の道路は小型車二台がどうにかすれ違えるほどしかなく、東側と北側の道路は普通乗用車一台分の幅員しかない。東側と北側の道路はL字になっていて、それぞれ直進はできない。
この、東側の道路に、一ヶ月に一度ぐらいの割りで、車が南から進入してきて、L字のところで立ち往生してしまうということが起きる。
幅員が車一台分しかないL字路を曲がることは、軽自動車でも、一番小型のものでないと無理だろう。
先日も、この自動車トラップにはまった車があった。
普通のドライバーは、L字路を曲がれないと判断して、来た道を静々とバックするものだが、先日の車のドライバーは、ここを強行突破しようとした。
うちの犬たちが盛んに吠えるので、何事かと外に出てみたら、家の北東の角に車が一台、北側の家の石垣と、家のブロック塀にはさまれて、文字通り、切羽詰った状態で、止まっていた。
「切羽詰る」の切羽とは、日本刀の部品の名称で、刀の鍔(つば)を柄に固定するためのもので、鞘との嵌め合いをよくする働きもある。
この部分の工作精度が悪いと、鞘との嵌め合いが悪くなり、抜刀という肝心要のときにスムーズに抜けないことになる。
薀蓄はこのぐらいにして、画像はまさしく、道路という鞘に、車という切羽が詰まった状態。
「にっちもさっちも」とも表現する。こちらの方の語源は自分で調べてもらうことにして、外に出て、止まっている車に近づいたところ、中から、案の定、女性ドライバーが出て来て、ブロック塀にぶつかったことを謝罪した。
案の定と表現したのは、この細い路地に迷い込むドライバーには、男性ドライバーも女性ドライバーもいるが、今回のように切羽詰る状態にまでしてしまう例は少ないものの、車をバックできなくて、立ち往生してしまうドライバーは100%女性だ。
こうなってしまう原因は、細い路地を進めば、先で行き詰ってしまうことを想定しないという、楽観バイアスがあることと、行き詰った時にバックして抜けるだけの運転技術がないことだろう。
前者は日本人には、男女を問わず、かなりの人が当てはまるので、トラップにはまるドライバーには、男性も女性もいるが、後者はとりわけ女性に強く当てはまるため、にっちもさっちも行かなくなるのは女性ドライバーに限られるのだろう。
狭い路地をバックで抜けるのは、男性ドライバーでも、神経を使う。このトラップを抜けるには、少なくとも30mをバックさせて、これまた狭いT字路をバックで曲がって、車の向きを変えなければならないが、これが出来ない。
その程度の運転技術すら持たないのに、平気で狭い路地に入ってくる。
私のように、悲観バイアスのかかった人間には、到底、想像の出来ない心性である。