ボクは猫が嫌いだった11

満身創痍のカムを見て、もうだめかもしれないと思いながら、とりあえず、家のなかに運び込むことにした。
運び込んで、明かりの下で見たカムの体は見るも無残なものだった。犬の牙の痕が全身、十数か所にあった。
体毛も咬まれた所を中心に、抜けてしまっていて、もうぼろぼろという表現でしか表しようのない有様だった。
しかし、見かけの無残さにも拘らず、脊椎の損傷はないようだったし、咬み傷も内臓を損傷するほどの深さはないように見えた。
いずれにせよ、夜遅い時間に開いている動物病院はない。明日の朝まで、生きていれば、病院に連れて行くことにして、今度は、チャゲの様子を見ることにした。
チャゲは私が投げつけた場所に横になったままでいた。ペロペロと後ろ足を舐めていた。チャゲと私が声をかけても、立ち上がることが出来ないらしく、弱々しくキューンというような声をあげた。
カムよりも、こちらの方が重大な障害を負ったかもしれなかった。頭の中に、腰椎損傷、または骨盤の粉砕骨折という言葉が浮かんだ。いずれも場合も、助ける方法はない。安楽死という言葉が、次に浮かんだ。
カムを助けるためとはいえ、重大な結果を招いたかもしれない自分の行動を後悔した。
こちらの方も、次の朝までそのままにしておくしかなかった。カムは一晩中、鳴き声をあげ続けた。
次の朝、カムはまだ鳴き続けていたが、それほど弱々しくは見えなかった。やはり、傷は数は多いものの、浅かったに違いない。
チャゲの方は、痛むのは片方の足だけのようで、なんともないもう片方の後ろ足で立ち上がったので、先の最悪のシナリオはもう考えなくても良さそうだった。
まずは、カムを動物病院に連れて行き、見てもらうと、やはり、浅い咬み傷だけで、抗生剤の処方で十分との診断だった。
一方のチャゲは、後ろ足の頚骨と腓骨が二本とも折れていて、手術が必要との事だった。幸い、腰の骨は折れておらず、また骨折も複雑骨折ではなかったので、ボルトによる固定手術で、全治一ヶ月ほどとの診断だった。
この診断結果に、私は心の底からほっとした。最悪のシナリオになっていたら、わたしの後悔は一生続くものになっていただろう。