夢は夜開く4

ある本というのは、画像に示した本のことだ。
夢に関する本はいろいろ読んだが、実験だの計測結果しか語らない心理学関係の本とか、逆にフロイトまたはその亜流のほとんど占いと変わるところのない夢判断の本とか、これまで読んだ本にはうんざりしていた私が唯一、興味を持った本だ。
この本では、実際に被験者(そういってしまっていいのか疑問なのだが、便宜上、そうしておく)がみた夢を「心脳パラダイム」という新しい夢の捉え方で説明している。
この本の70ページにある説明を次に引用してみる。

言語や会話の流れ
デリアの夢には、本来必要とされそうな状況にあっても、会話というものが存在しない。彼女の夢の報告のうち、意思疎通が必要な三つの場面のどこにも、「…と私は言った」「…と彼が言った」というような場面はない。事実、引用表現が登場しないのだ。送電線に気球が接触しそうになっても、デリアと父親、姉妹との間に交わされてもよさそうな、危険を喚起しあう会話はなされなかった。彼女らは論じ合いことなく予定を変更した。これは夢の通例である。つまり、しかるべき会話があってもよさそうなのに、暗黙の合意のみでことが果たされてしまっている。

この本によれば、会話のない「暗黙の合意」は「夢の通例」なのだ。この記述には驚いた。
これが本当だとすると、夢の中の登場人物が誰もしゃべらない夢は、私が思った以上にたくさんの人が見ているのかもしれない。