デング熱

最近発生したデング熱騒ぎ、ついに日本にやってきたかと思う。
温暖化に伴い、感染地域がどんどん拡大し、いずれ日本にも上陸することが予想されていたからである。
ところで、今回の出来事でいくつかの疑問を持った。そして、メディアに登場する専門家の口からはこの疑問に答えるような回答がまだない。
疑問点はいくつかある。
まず、今回の感染事例は、今年になってからのことで、それ以前の年からの継続的なものではないといえるのかどうか。
デング熱の感染例が発見されたのは、ある一人の医師の判断で、ウイルス検査が行われたからだという。その検査が行われなければ、デング熱の感染の広がりは今日の時点になっても、まだ分からなかったかもしれないのだ。
このことは、デング熱は去年の夏、あるいはもっと以前から、継続して発生しているのに、そのことに全く気づいていなかっただけかもしれないということだ。
現に去年の夏に、日本に観光でやってきたドイツ人女性が、帰国後にデング熱を発症している。
観光旅行先は日本のみで、発症の時期等から見て、デング熱に感染したのは、日本においてだということが強く疑われる。
デング熱は知らないうちに、日本のかなり広い地域にすでに蔓延してしまっているかもしれないのだ。
次に、感染の広がりについて、テレビで診たある専門家は、人から人への感染はしないので、むやみ恐れる必要はないというようなことを述べていた。
これはどうなのだろう。感染の広がりという点から見れば、人から人への感染より、蚊の吸血による感染のほうが制御が困難だろう。
デング熱は発症までの潜伏期間に、宿主であるヒトの体の中で、ウイルスが爆発的に増殖し、その感染者の血を吸った蚊が媒介して広がる。
発症前だと、感染者があちこちと移動するから、移動先で蚊に刺されれば、もはや、感染の拡大は止められないだろう。
同じように、蚊の媒介により感染が広がる西ナイル熱が米国において、一気に全土に広がった例を見れば、デング熱の感染の拡大阻止はまず無理だとわかる。
さらに、感染者の血を吸った蚊が産む卵に感染が受け継がれないのかどうか。
今回の感染者のほとんどが、同じ遺伝子型のウイルスに感染している。蚊に刺された場所もほぼ、代々木公園および、その近くに限局されている。
そして、代々木公園内の別々の場所で採集されたかの何匹かにウイルスに感染しているものが発見されているから、ウイルスの感染が、蚊の集団の中で拡散していると考えられる。
それとも、ある一人のデング感染者が、代々木公園内でたくさんの蚊にたかられて、そのために、ウイルスを持った蚊が何匹か見つかったとでもいうのだろうか。
ヒトの体内だけでなく、蚊の集団の中でウイルスが増殖するのならば、今回の感染者が日本の広い範囲で見つかっているから、ウイルスはすでに全国にばら撒かれ、それぞれの地で、その数を増大させ続けていることになる。
幸い、デング熱の致死率や重症化率は高くなく、たとえ日本でデング熱が常在化しても、それほど恐れる病気ではないのだろう。
新たな、季節性のうっとうしいものが増えたと思えばいいことになる。
ところで、私はこのデング熱のことを小学校低学年のときにすでに、昆虫図鑑などの「昆虫がうつす病気」などの解説で知っていた。今から50年以上前のことだ。
私の知識のほとんどは、学校で教わったことではなく、自分の興味で図鑑、百科事典などを調べて身に付けたものだ。
しかし、こうした知識の身につけ方には問題がある。それは、その知識が正確でなくても、それに気がつかないということだ。
デング熱に関していうと、私はこれを長い間、「テング熱」だと思い込んでいた。
私には、昆虫以外にも、動物に関する知識がかなりあった。熱帯ボルネオにはテングザルというのがいて、鼻がテングのように大きいということも知っていた。
昆虫に関する知識と、動物に関する知識が入り混じり、変形して、蚊に刺されて熱帯にある病気、「テング熱」にかかると、鼻がテングのように大きく腫れ上がり、テングザルのような顔になるのだと思い込んでいたのだ。
もし、デング熱がそうだとすると、これは本当に恐ろしい病気に違いない。