知性が大事#5

知性の高さを重んずる西欧諸国。オーストラリアはそうした知性主義が人々の間に浸透している国のひとつだ。
インターンシッププログラムに参加して、半年ほどオーストラリアに滞在したことがある。
西オーストラリアの小さな町、カタンニンのhigh schoolで日本の文化・社会の事情を紹介する授業を担当した。
短い滞在期間だったが、それでも価値観の違いを感じさせるエピソードがいくつかあった。
まずは最初のエピソード。
私のオーストラリア滞在は10月に始まった。オーストラリアでは、一年の学習期間の前期が始まって少し経った頃に当たる。
受け持った授業の中で、予想通り捕鯨に関する質問が出てきた話はこれまでに述べた。生徒の質問を通じて、文化や価値観の違いを知ることになったが、実際の自分の体験というのではない。
10月が戸惑いのうちに過ぎ、11月は少しなれて授業にも余裕が出てきて、そろそろ12月が近づいてきた頃のこと。
12月と1月はオーストラリアの学校は夏休みとなる。
さて、いよいよ夏休みが始まるという頃になって、私のいわば世話係を担当していた社会科の先生が盛んに「夏休みの計画はどうなっているの?」と聞いてくる。夏休みに特別したいことはなかったので、「いや、まだ決めていません」と返事していた。
二三日するとまた同じ質問。やけに人の夏休みのことに関心があるのだなと思っていたら、そうではなかった。
インターンシッププログラムの参加の際の説明では、現地滞在期間中の滞在先、食事などは全期間中、滞在を受け入れる学校側の責任で予定が組まれているというものだった。
ところが、こちらの勘違いなのか、学校側の勘違いか、夏休みの期間中の滞在先は決められていないというのだ。
これは困った。オーストラリアの夏休みは長い。その長い期間中の滞在先を自分でコーディネートするのは容易なことではない。
ホテルなどの宿泊施設を使うなどということは問題外だった。電話で予約できるようなホテルなどは宿泊費用がバカ高く、とてもそんな余裕はなかった。
さてどうするか。