日本人の英作文2015-9

「つばめのつんちゃん」の英作文8回目。この短い童話もそろそろ終わりに近づいてきた。
子供向けの優しい日本語でも,英作文の対象となると,結構難しい。
今回の課題箇所と作文例は次のとおり。

課題文
「よかったね、つんちゃん」
「つんちゃん?}
「うん、名前つけたの。つばめのつんちゃん」
まりちゃんとサリーちゃんは、遊ぶのもわすれて,毎日つんちゃんを見てすごしました。
訳文1
"Good for you, Tun-chan."
"Tun-chan?"
"Oh yeah. I named it, Tun-chan."
Mari and Sally were fascinated to see it without so much as playing every day.
訳文2
"Good, now, it is all right, Tun-chan?"
"Tun-chan?"
"Yes, I named it, Tun-chan!"
Mally and Sally spent the days to watch it, forgetting about play."

この部分は、前回の英作文の最後の部分からの継続で,最初の台詞はサリーちゃんがつばめに向かって言った台詞で、そして次の「つんちゃん?}は、サリーちゃんの言った「つんちゃん」に対してのまりちゃんの疑問を表していると取るのが普通だ。
訳文2の作者は別の解釈をしているようだ。
訳文1の"Good for you"は、何か評価すべきことをなした相手に対しての褒め言葉。この状況で使う台詞ではない。
つんちゃんは何もしていないわけで、この台詞を使うなら、巣を作ったひろみ先生に対して使うべきことば。
では、この状況での「よかったね」はどう表現すべきか。これがなかなか難しい。
日本語の「よかったね」は状況が違う多くの場面で使われることば。しかし英語だとその状況によって使うべき台詞が違う。
日本語で「よかった」とあるからといってgoodで表現できる場合はあまり多くないと思う。
ここでは、"You are safe now"とか、"You are happy with this"とかが思い浮かぶ。
もっとぴったりの台詞があるかもしれないがちょっと思いつかない。
二番目のサリーちゃんの台詞はどちらの訳例も"I named it, Tun-chan"とitの後に余計なコンマを入れている。
これは元の日本語が「名前をつけたの」でいったん句点を入れているからだろうが、英語の場合動詞nameはいわゆるSVOC形をとる典型動詞だからコンマは要らない。
訳例1の最後の文はいくつかの問題がある。
この英語を日本語に直すと「まりとサリーは毎日遊ぶことさえしないでつんちゃんを見てうっとりしていました」となる。
不定詞to seeの部分がwere fascinatedとなった理由を説明する形になっているからだが、不定詞の意味はその文の動詞などで決まってくるので,用法と文の形に気をつけないと,別の意味になってしまう。
訳例2は「〜してすごす」の通常の言い方spendを使ったが、「〜して」の部分は動詞の進行形を使うべきところ。
またspendの目的語にthe daysを使っているが、定冠詞で特定できるdaysが不明。
この件に関して作者はdaysの後の句で限定できるからと答えたが、名詞の後からそれを限定する句は当然形容詞句ということになる。
しかし、訳例2のto watchをwatchingと正しく変えてみても、これは副詞句なのでその前にあるdaysを限定できない。
さらに、ここを不定のsome daysに替えてもまだ不自然さが残る。
なぜなら、まりちゃんとサリーちゃんは日がな一日つんちゃんを見てすごしたわけではないからだ。
ここは、その後の「遊ぶのも忘れて」で,二人の遊びの時間をつんちゃんを観察することに充てたととるのがいいと思う。
訳例
"You are happy with this, aren't you, Tun-chan?"
"Tun-chan?"
"Yes, I named it Tun-chan. Tun-chan the swallow."
Since then, both of them came every day to spend some time watching it forgetting to play.