日本人の英作文2016-20

童話、「キツネのハンカチ」の英作文。
今回の課題部分と、訳文例は次の通り。

課題文
キツネは、中に入ってきてエプロンをはずすと、エプロンの真ん中についているポケットを見せました。
まわりの糸がほつれて、いまにもとれそうになっています。
訳文例1
The fox came in and took off his apron. He showed the pocket on the center of the apron to Mr. Hirai.
It had almost come off from the apron with the seem coming apart.
訳文例2
After entering the tailor's, the fox took off his apron and showed it to Mr. Hirai.
The pocket just in the middle of it was about to come off with almost all the seem ripped open.

出だしの部分、「キツネは、中に入ってきてエプロンをはずすと」はどちらの訳文例でも構わない。
問題は、「エプロンの真ん中についているポケット」という部分。
このグループには、関係代名詞の限定用(制限用法)の使い方について、日本人がきちんと理解していない点を繰り返し説明してきた。
だから、どちらの訳者も制限用法を使わないでこの部分を訳そうとした。
ところが、訳文例1のような、"the pocket on the center of the apron"と、直前の名詞を前置詞句で限定し、限定された名詞に定冠詞のtheをつけるこの表現は
"the pocket which was on the center of the apron"と表現したのと何ら変わりがない。
つまり、このエフロンには、複数のポケットがあり、そのうち、エプロンの真ん中にあるポケットと、対象を限定していることになる。
このことは訳文例2にもそのまま当てはまる。
この点を二人の訳者に指摘したところ、「そうです。このエプロンには複数のポケットがあるんです」と答えた。
日本語では、対象を絞り込むか(制限用法)、単なる付加的情報か(非制限用法)の区別がないから、これはこれで正しい主張ということになる。
訳例では、エプロンには、真ん中についたものしかない前提で訳してみた。
次の文で、「まわりの糸がほつれて、いまにもとれそうに」となっているところをどちらの訳者もいわゆる付帯状況を表す分詞構文を使っている。
学校文法では「付帯状況の分詞構文」は、重要な表現法として必須学習項目になっている。
英語の勉強ができた人ほど、「○○が〜して」となっていると、この構文を使いたがる。
しかし、実際の英文でこの構造はまず出てこない。
もっと、自然でよく使われる英語で表現する。
訳例
The fox came in and took off his apron. Then he showed the pocket of it, which was stitched in the middle, to him. It had almost come off because the seam had frayed.