関係代名詞の制限(限定)用法について4

ここで、ある文法書の記述を引用してみる。

英文法解説 江川泰一郎 P76の引用
§55. 限定用法と非限定用法
who と which には限定用法 (Restrictive Use) と非限定用法 (Non-restrictive Use) がある。§54はすべて限定用法であった。非限定用法はさらに挿入用法と継続用法に分けられるが、通例 who, which の前にコンマをつける。また、非限定用法の関係代名詞は目的格でも省略されない。
(1) 非限定用法---挿入用法 限定用法のように先行詞を限定するのではなく、先行詞について説明を加えるために文の途中に挿入する用法である。
(a) Children who learn easily should start school as early as possible.
(物覚えのいい子供はできるだけ早く学校へ行くほうがいい)
(b) Children, who learn easily, should start school as early as possible.
(子供は[みんな]物覚えがいいから、できるだけ早く学校へ行くほうがいい)
a) は限定用法で、物覚えのいい一部の子供に限つての話である。b) は非限定の挿入用法で、「子供はみんな物覚えがいいから」という説明を挿入したものである。
a) The flowers which she planted in the front yard are growing well.
(前庭に植えた花はよく育っています)〈裏庭にも植えたのかもしれない〉
b) The flowers, which she planted in the front yard, are growing well.
(彼女は花を[全部]前庭に植えましたが、よく育っています)
a) は前庭の花に限ってのことで、裏庭その他にも植えてあったかどうかには触れていない。ただし「裏庭の花はよく育たなかった」という含みは感じられる。b) は花を全部前庭に植えたことが明らかである。
a) の The flowers は which 以下の限定によって特定化されたために定冠詞をつけたもので、b) の The flowers は (which 以下がなくても) 前後関係からわかっている花を指すために定冠詞をつけたものである。
(2) 非限定用法---継続用法 一応完結した文の終わりにつけて、先行詞についてさらに説明を加える用法である。通例 and または but などで言い換えることができる。
a) He has two daughters who are studying music.
(彼には音楽を勉強している娘が2人います)〈ほかにも娘がいるかもしれない〉
b) He has two daughters, who are studying music.
(= He has two daughters, and they are [both] studying music.)
(彼には娘が2人いて、2人とも音楽を勉強しています〈ほかに娘はいない〉
a) は限定用法の who が two daughters を限定し、この2人以外にも娘いるかどうかには触れていない。b) は He has two daughters で文は一応結している。その完結した文の末尾の two daughters について、さらに説明を加える役目をしているのが,非限定の継続用法の who である。

上記の例文でHe has two daughters...の後に、(他にも娘がいるかもしれない)としている。
なんとも歯切れの悪い説明で、他に娘がいるかもしれない程度の可能性なら,他に娘がいない可能性のほうがずっと多いと考えるのが普通だ。
もしそうだとすると、非限定用法となんら違いがなく,限定用法の存在意義がなくなってしまう。
筆者は「a) は限定用法の who が two daughters を限定し」と述べていることから、限定用法の限定とは,関係詞節で述べられているものだけに先行詞の内容を「限定」して取り上げることだと理解しているらしい。
他の文法書を見ても似たり寄ったりだ。
こうした理解では、マーク・ピーターセンの説明のような理解には決してならない。