I'm the one who loves you.

表題の英語はいわゆる限定(制限)用法の関係代名詞を用いた文。簡単な単語だけでできているこの文の意味をちゃんと理解できる英語学習者は意外に少ない。
まず、"one"の意味。「一つ」という数詞を表しいるのではなく、不定代名詞と呼ばれるもの。
このoneが使われるのは、同種の普通名詞が先行する場合がほとんどだが、例文の場合、いきなりこの言葉が使われる。
その時のoneの意味は、"a woman, a girl, a man"などを表している。
続いて、文全体の意味。
文法に詳しい人だと、先行詞のoneにtheがついているので、関係詞節の条件を満たす人間は私だけだという意味ととるだろう。
実際、表面的な意味はそれで間違いない。
しかし。その表面的な意味を日本語にして、「あなたを愛している人間は私だけだ」という訳をこの文につけたとしたら、ちょっと違う。
この訳文だと、あなたみたいな(もてない)人間を好きになる物好きは、私以外にいない」という意味にもとれる。
ところが実際、この文が使われる場面は、むしろ真逆なのだ。
英語の小説を読んだり、やテレビドラマ、映画などを見ていると、上記のセリフが時々出てくる。
いわゆる三角関係などの複雑な恋愛関係だと、かなりの頻度になる。
三角関係を例にとると、一人の男性に二人の女性が好意を寄せている場合、このセリフを吐くのは、女性のうちの一人またはどちらも。
つまり、一方の女性が他方の女性より、ずっとあなたを愛していることをアピールするためのセリフだ。
彼を好きな女性が何人いても構わない。本当に愛情を持っているのは自分だけだとアピールするわけだ。
客観的には複数の女性が彼を愛しているにもかかわらずこう言って自分の愛情の深さを表現する。
こういう意味になるのは、関係代名詞の限定用法というのが、先行詞の内容を多数のものから、一つのものに絞り込んでいくという機能に基づいている。
そして、絞り込みによって排除されたその他のものとの比較がつねに言外に含意される。
日本人は限定用法の言外の比較、または対照ということを理解していない。
この点に関しては、「関係代名詞の制限(限定)用法について」という表題で6回にわたって記事にしたので、ここでは詳しく述べない。
ところで、この言外の比較、対照は、いわゆる強調構文にもみられる。
今回の「日本人の英作文」で、訳文2の訳者は強調構文を使った。この文を簡略化すると次のような文になる。
It is Ms. Hirai who is using the machine.
強調構文では、強調する単語を"it is"と接続詞の"that"の間に置き、そのあとを平叙文で続けると習う。
接続詞のthatは、強調される単語が、その文の主語である場合、whoになることが多い。
これは、とりもなおさず、強調語を関係代名詞の先行詞に類似したものとみているからだ。
その類似性のため、言外の比較や対照が含意される点が同じになる。
つまり、上記の文をその言外の意味も含めて訳すと、
「そのミシンを使っているのは、ほかの誰でもない、平井さんだけです」となる。
「ほかのだれでもない」って、この物語、ここまでの話で、平井さんしか出てきていない。