井戸の埋め戻し儀式

上水道が完備した今時、普通の家庭で、井戸を使うことはもうないだろう。第一,井戸がそもそも身近にはないのが普通だと思う。
私が子供頃、それも小学校高学年になるまで、家では井戸が日常生活にとって、不可欠なものだった。
この井戸水を使う日常が、ピロリ菌蔓延の原因かもしれないといわれている。確かに、同じような生活を経た人間は、ほとんどがピロリ菌に感染しているようだ。
それはともかく、私のうちの北側の家には、使わなくなって数十年経つ井戸がまだそのまま残っている。
この家に住んでいた人が全員亡くなり、土地が転売された。その土地に新しい家を作るためだろうか、そのままになっていた井戸の埋め戻し工事が始まることになったようだ。
古井戸というのは、妙に不気味なものだ。
「リング」というホラー映画は,この古井戸の持つ不気味さを最大限利用し、成功したのだと思う。
私はこのホラー映画をビデオ録画しておいて,深夜に一人で見た。身近に、それも自分の部屋の北側の窓を開けると、まともに古井戸が見える。
そんな環境にある私にとって,「リング」は本当に恐ろしいホラーだった。
ビデオを見ている途中に、雨戸が多分風の所為だろうか、突然大きな物音を立てたとき,腰が抜けて,立てなくなってしまった。
恐怖の元凶の、その古井戸の埋め戻し儀式が、行われたのは、3月27日の日曜日、午前9時少し前のこと。
多肉植物のトレイを屋根の上に出していて、儀式が行われているのに気がついた。
屋根の上から、無断で,儀式の様子を撮影したのが次の画像。

  • 儀式の様子(2016年3月27日撮影)


ちなみにこの井戸のある家の家族には、いろいろ不幸なことが続き、私が子供の頃から知っていた家族5人のうち、4人が次々となくなり、一人残った家族は、体が不自由だったため、住み込みの家政婦さんが世話をしていた。
ところが、この家政婦さんが数年前に,突然の脳出血で倒れ,息を引き取った。
そして、そのわずか一年後に残った家族の人も亡くなった。
まさか、家族に降りかかった不幸は、ちゃんと手入れをしていなかった井戸の祟りなどではないだろうが、それでも神事が行われ、視界からこの古井戸が消えたら、私も安心できるだろう。