8月の別れ 2

ピーコタンを連れ帰ったのは、お昼近くの午前中。
連れ帰って、小さな箱に入れた。強制給餌をするには、体を押さえていなければできない。
鳥かごに入れたりすると、給餌のたびに、捕まえるのが大変なので、給餌に慣れるまでは、小さく暗い箱に閉じ込めておく。
箱に入れた直後は中でばたばた暴れていたが、そのうちに静かになった。
そのころを見計らって、一回目の給餌。その日のうちに最初の給餌を入れて4回ぐらいはエサを与えた。
次の日の朝早くに、箱のふたを開けて様子を見ると元気そうだったので一安心。この日も最初の頃の給餌はくちばしをこじ開けての強制給餌だったが、数回給餌をした後は、フードをもらえるとわかったのか、給餌のためのシリンジを見せるとその先のチューブに自分から食らいついた。
その日の最後の給餌をする頃には、早くも状況が呑み込めたらしく、私が箱のふたを開けるとひな鳥がよくやる羽を震わせてエサを催促するポーズをとった。
これまで何度もスズメの保護をしたが、こんなにも早く懐いた例はなかった。
こちらの給餌の腕が上がったことも関係していると思う。
何はともあれ、保護二日目で保護は順調に行きそうだと思った。
保護三日目。ピーコタンは私の姿を見ても怖がらなくなったので、小さな箱からごく普通の鳥かごに移した。
エサの時間になると、鳥かごのふたを開けると、ピーコタンが中から勢いよく飛び出してくる。シリンジのチューブに自分から食いつくので、そのタイミングでシリンジのシリンダーを押すとエサをやることができる。
ヒナ用の流動食は水分が多く、巣立ちを迎えた子スズメにはあまり適したエサではない。
それで、保護五日目からは、ひな鳥用のパウダーフードに手乗りの小鳥用のパウダーフードを半分混ぜたものを与えることにした。
後者のパウダーは繊維質が多く、シリンジでは与えることができない。先端のチューブに詰まってしまって押し出せないからだ。
この場合、やや硬めになるようにパウダーを水で溶いて、それを竹べらの先ですくい取って、子スズメに差し出す。
もう十分に私に懐いていたので、ピーコタンは差し出された練りエサをくちばしでつついて食べた。
名まえを呼ぶと自分のことだとわかっているのかどうか、エサの時間になってわたしが近づくとすっ飛んでこちらにやってくる。
子スズメであれ、子猫であれ、幼い生き物が懐いて自分から寄ってくる時の様子は何ともかわいい。
以前の私はこうした感情とは無縁だったが、10数年前に、野犬の子供を保護して育て始めたころから感じ方に変化が現れたように思う。