日本人の英文解釈5

今回の課題文について、もう一つ説明が必要な点がある。
それは比較表現が含まれていること。
仮定法に比較が含まれているものといえば、口語で頻繁に使われる表現がある。
次のようなものだ。
1. Couldn't be better.
2. I couldn't agree with you more.
3. I couldn't care less.
他にもあるかと思うが、即座に思いつくものをあげてみた。
3つ表現には共通点がある。それは、仮定法であることを示す条件節がないこと。主節にあたる部分がいずれも否定形であることだ。
1.の表現は出会ったときの挨拶としてよく使われる。意味は「気分は最高」というような意味。
2. は、お互いの意見を交換しているときなど、相手の意見に全面的賛成を示すもの。
私は、いかにも英語らしいこの表現を知ってから、英会話のサークルなどで頻繁に使うようになったが、残念ながら日本人同士の会話ではうまく意味が伝わらなかった。
英会話に興味があり、それなりの会話力のある人でも、この表現を知らないと、自分の意見を否定されたと感じ、不愉快になってしまうのだ。
実際、最後のmoreがないと、単純過去形の否定文。「あなたの意見には賛成できなかった」という意味だ。
ところが、文の最後にmoreがつくだけで、意味は真逆になる。
また見かけの時制が過去でも、実際には今現在のことを言っていることになる。
この表現の意味を知っている人でも、なぜそうなるかを文法的に説明できる人はまずいない。
1.の場合に省略されている部分を補ってみて、文法的な解析をしてみる。
It couldn't be better than this even if it were in any other situation.
おおよそ上記なようなことになる。
意味は、「たとえ他のどのような状況であったとしても、今のこの状態以上に状態がよくなることはないだろう」。つまり、いまのこの状態が最高だということ。
2.も同様に欠けている部分を補うと
I couldn't agree with you more than this even if I tried to do so on any other condition.
「ほかのどのような条件で、これ以上の程度の同意をしようとしてもそれはできない」
つまり、いまのこの同意の程度が最高だということ。
3.の場合は最高の反対の最低条件を示す。
I couldn't care less than this even if the thing happened in any other situation.
「たとえこのことが他のどのような状況で起こったとしても、私はこれ以下の気にしない状態にはならない」
つまり、この事を全然気にしていないということ。
習うより慣れろとばかりに、文法的な裏付けのない理解の仕方だと、この表現を知らない人になぜそういう意味になるかを聞かれても納得のいく説明はできないし、私のように日本人同士の英会話では、結局は使えない表現になってしまう。
また、今回の課題文などに出会っても、これが上記のような会話で使われる表現と同じ構造をもつものということにも気が付かないだろう。