最近放送された健康情報番組で注意を引いたものを二つ。
ひとつは3月21日に放送された「主治医の見つかる診療所」という番組。もうひとつは3月24日のNHKスペシャル「隠れ脂肪肝が危ない!」。
前者の副題は「コレステロール&中性脂肪の新常識」。新常識といいいながら、コレステロールの中でも悪玉と呼ばれるLDLの数値を上げてしまう元凶を動物性脂肪の過剰摂取だと番組に出演していた医師が説明した。
しかし、食事の内容とLDLの数値には明確な関連性がないとして、2015年の厚生労働省発表の国民栄養摂取基準ではLDLに関して、上限値を設けなかった。
平たく言えば、LDLを下げるため、ある特定の食物の摂取を制限したところで何の効果もないということなのだが、相変わらず、世間の常識や、多くの医者はこのことを無視し続けている。
この事実に関しては次のサイトが参考になる。
https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/life/148.html
私自身の体験で言えば、2016年の秋からはじめた糖質制限ダイエットでこれまで、ほとんど食べてこなかった動物性脂肪を多く含む食べ物、つまり肉類をかなり食べるようになったがLDLの値はほとんど変化しなかった。
総コレステロール値もそれほど変化なし。ただ、LDLとHDLの相対的割合には少し変化があった。
その一方で、中性脂肪値には大きく減少した。糖質制限が中性脂肪の値を減らすのに効果があったことは明白。
そして体の中の中性脂肪を増やす元凶は食物の中の脂質と糖質。脂質の中でも動物性脂肪が問題。
ただ、日本人の場合、摂取カロリーの50%以上を糖質で摂っているから、中性脂肪増加の主犯は脂質ではなく、糖質。これも、番組中では明確に指摘されなかった。
もっとも、番組後半では、中性脂肪に焦点が当てられ、炭水化物や果糖の摂取過剰が中性脂肪増加につながることが説明されていたので、その点は「新常識」という番組の看板に偽りはないといえる。
中でも注目すべきは「食後中性脂肪値」というもの。血液検査では中性脂肪値が正常範囲内であっても、食事を取った後の値が急激に上がるタイプの人は、多くの健康リスクを負っているというもの。
番組出演の元テニスプレーヤーがまさにこのタイプで、本人は現役引退後でも、健康にはものすごく自信があったようなのだが、中性脂肪に関する検査結果を告げられ、かなり落ち込んでいた。
現在の血液検査の方法は血糖値も、中性脂肪値も空腹時の血液を採取してこれを検査する。
しかし、血糖値でも、食後に急激に値が上がるタイプの人は、それだけでさまざまな健康リスクを負っていることが明らかになっている。
同じことが中性脂肪値でも言えるという点が明らかになってきたわけだ。
NHKスペシャルが取り上げた脂肪肝。脂肪肝とは肝臓内に中性脂肪が溜まった状態のこと。
脂肪肝と病院で診断されても、それほどの危機感を持たない人が多いようで、番組でもそうした人の一人が登場した。
しかし、脂肪肝は放置すると肝硬変にまで進んでしまう。
こうなると、さまざまな健康リスクが生じることになる。脂肪肝の段階で、これを改善すれば問題はなくなる。
番組内容は次のサイトで知ることができる。
https://www.nhk.or.jp/special/shiboukan/
この番組での重要な指摘は、脂肪肝はALTやAST、またはγ-GTPといったような、よくある血液の検査項目の値からは発見できないという点。
番組では、特殊な検査機器を用いて脂肪肝の人を見つけていたが、この検査機器を使った検査は通常受けられないから、自分が脂肪肝であることを知らないままの人が世の中には多数存在するということだ。
2年前のNHKの番組、「血糖値スパイクが危ない!」では、食後血糖値の値が重要だと指摘したが、このときも、通常の血液検査では食後血糖値が急激に上がるかどうかは分からないとしていた。
健康に関する新たな知見はどんどんと増えているのに、それに対応すべき検査システムは古いまま。そして、世間の常識も古いまま。
これでは、防げる病気も防げないままだろう。
脂肪肝になっているかどうかは個人的には、ある方法でかなり正確に知ることができると思っている。
それは、食後中性脂肪値が通常検査の場合に比べて急激に上がるタイプの人はたぶん、脂肪肝だということだ。
何を隠そうダイエットを始める前のわたしがそうだった。
食後の中性脂肪値を知るのは簡単。血液検査の前には食事をしないように指導されるが、それを無視して、検査前の2時間ほど前にいつもどおりの食事をして、その事実を隠して採血してもらえばよい。
そしてでてきた結果を以前に検査したときの値と比較すれば、自分が食後に中性脂肪値が大幅に上がるタイプかどうか簡単に知ることができる。