日本人の英文法1

  • 時制と相

日本人の英語力に関して、よく言われるのは、文法の知識や語彙は豊富で、読むことは出来ても、聞き取りやしゃべるのが苦手というものだが、サークルのフリートークの話題提供のために出される英語の質問文を見る限り、文法力にも疑問符をつけざるをえない。
文法力というのも、語法を含める場合と、純粋に文法事項に限る場合があるが、後者だけに限っても日本人には、かなり多くの点で、弱点がある。
前回に示した例文を例に取ると、それぞれの例文に併記された日本語は次のようだった。
3. ネットショッピングの失敗例は、ありますか。
4. ネットショッピングに、よく利用するサイトはどこですか。
例文3には、わずか8語からなる文に、重大な問題が複数ある。先ずは時制が問題である。
日本語には、時制の代わりに「相」があると、マーク・ピーターセン「日本人の英語」の99ページにあるが、この違いが英語の時制の無理解に通じている。
日本語に英語に対応すべき時制がないことから、日本語から英語に翻訳するとき、英語のそれぞれの時制に与えられた、定型訳を参考にして直訳的に変換してしまう。
つまり、「〜する、ある」という日本語なら現在形を使い、「〜している」なら現在進行形を使うというやり方だ。
上記の例文3は、まさにこうした手法で日本語を英語に変換したため、時制がおかしくなったものと思われる。
もとの日本語が、「ネットショッピングで、失敗したことがありますか」となっていれば、完了形を使ったのだろうが、もとに日本語の形式だけにとらわれたため、時制を間違えてしまった。
現在形と、現在進行形の混同はしょっちゅうで、会話の中でも頻繁に現れる。
A: What are you doing when you are free?
B: I'm playing tennis at a sport club.
というような会話が交わされることが少なくない。
また、間違いとはいえないが、自己紹介では次のような言い方もよく耳にする。
"My name is ××. I am living in ○○. I am working for a △△company."
日本語では、「〜に住んでいる」というので、直訳的に進行形を使い、職場に関しても、「〜で働いている」が普通の言い方なので、そのまま進行形にするのだろうが、進行形が基本的に一時的状態または、限られた期間の状態を指すということが分かって使っている場合はあまりないように思えるのだ。
上の自己紹介の英語では、以前は現在とは違う場所に住んでいて、職場も違っていて、今の住所も職場も一時的なもので、いずれは、変わるつもりだというようなニュアンスが入ってしまっていることに、たぶん気がついていない。