空中散歩2

今日はたまたま朝の5時ごろ目が醒めた。陽はまだ昇っていなかったが、あたりはもう明るかった。ちょうどいい機会と思って、ガーコを飛行訓練のため、河川敷に連れて行くことにした。
6時過ぎに河川敷に到着。ガーコは前回よりは高く飛んだが、やはり程なくして、川を跨いで通っている国道の橋脚あたりに着地した。
上流方向に場所を変えて、もう一度放り投げたが、ほとんど飛ばない。もう飛ぶ気がないのかと思ったが、3度目に放り投げると、いったん着地しかけたあと、ぐんと羽に力が入ったかと思ったら、堤防を越えて、飛び去った。
あわてて、堤防を駆け上がり、向こう側を見たが姿が見えない。はるか向こうまで、飛んでいったとは思えず、あたりを探していると、堤防近くにあるマンションのベランダの手すりに止まっていた。
「ガーコ」と声をかけたが、知らんぷり。
いよいよ外の世界に戻る気になったかと思い、帰宅することにした。
朝食をとって、堤防のマンションが見えるところに戻ってみたが、もうベランダの手すりにガーコの姿はなかった。

  • マンションの屋根で、羽を伸ばすガーコ

しかし、あたりを何度も回ってガーコの姿を探していると、マンションの屋根の上にガーコを発見。
ガーコはその後、マンション近くの小学校の屋上タンクまで、飛んで行きその姿はほんの小さくしか見えなかった。
あそこまで飛べるなら、もう大丈夫だろうと思っていると、他のカラスが出現し、屋上タンクから追い出された。カラスには縄張りがあるようで、侵入者には容赦がない。
あわてて飛び出したガーコに向かって、「ガーコ」と声をかけると、その声に反応するかのように、こちらのほうに向かって飛んできた。
こちらに向かって飛んでは来たが、堤防に着地せず、国道の橋脚の鉄骨に止まった。
この後、何度も様子を見るため、堤防にガーコを見に来たが、ガーコじっとしたままだっ
た。

  • 橋脚に止まったガーコ


最後に様子を見に戻ってみたときに、その姿がなくなっていたとき、いよいよお別れだと覚悟した。
このときの気持ちは、なんとも複雑なものだ。元気の良いカラスだったら、何の心配もないのだが、不自由な片足を抱えたガーコがこれから元気でやっていけるか、不安が先走る。一方厄介払いが出来たという開放感もある。
そうした気持ちを抱えながら、帰路につくと、国道が川の堤防にかかる真下のあたりの、のり面のところになにやら黒いものを発見。
もしやと思って近づくと、やっぱりガーコ。橋げたから飛び出したはいいが、ほとんど飛べずに、着地したようだ。
というわけで、またまたガーコは、我が家に逆戻り。
不思議な安堵感と、厄介者が舞い戻ったという気持ちがない交ぜになった状態で午後一時半頃、帰宅した。人騒がせな7時間の空中散歩であった。