オリエント急行殺人事件#2

リンドバーグ事件を犯罪ではなく、事故だとする説の真偽のほどはともかく、この説がそのまま当てはまりそうな実際の事件がある。
それは、1996年12月に起きたジョンベネ事件だ。事件の詳細はネットなどの記述に譲るが、この事件を当時の日本や、アメリカのメディアなどの報道から事件の概要を知った私には、事件の展開がかなりはっきりとイメージできた。
そのイメージの最初の部分は、クリスマスプレゼントか何かの些細なことで、小さな子供二人がけんかをするシーンだった。
私が抱いたイメージを克明に説明することも控えるが、私は自分が抱いたイメージを他人に話したことはない。
そして、ジョンベネ事件からかなり経ってから、ケーブルテレビで見た、リンドバーグ事件の真相と題する番組。全く別の事件だが、その本質は全く同じだと感じずにいられなかった。
それ以来、またまたかなりの年月が経った去年のこと、いつも見ているケーブルテレビのとある刑事物。
ある家族に起きた事件を刑事たちが追及する。その家族は父親と母親。そして中学生ぐらいの男の子と、まだ幼児の弟。さらに乳飲み子が一人。
父親と、母親が出かける間、長男が二人の子どものベビーシッター代わりに面倒を見ていた。
ところが、乳飲み子が寝かしつけていたはずのゆりかごからいなくなった。
その後、乳飲み子を誘拐したとする犯人からの身代金要求のメモが見つかる。しかし、身代金受け渡しの現場に犯人は現れない。
程なくして、誘拐された乳児の遺体が被害者宅の近くで発見される。司法解剖の結果、死因は窒息死。口と鼻を押さえられたためだと推定された。
しかし、捜査が進むに連れ、家族の証言にいくつもの矛盾点が見つかる。
刑事たちは、兄に疑いの目を向け始める。ベビーシッターを引き受けたものの、泣き声がうるさいので、口と鼻を押さえて殺害したのではないかと。
兄が疑われていると察知した母親が、自分が殺したのだと告白する。一体事件の真相はどうなのか。
しかし、刑事たちはこの自白を信じない。ほうっておけば、母親が自分の子どもを殺したことで殺人犯となる。
そう刑事に言われて、追い詰められた兄はついに、真相を話し始める。
その真相とは、乳飲み子を殺したのは、その子の直ぐ上の兄、つまりまだ二、三歳の幼児だというのだ。
台所のなべつかみで遊んでいた幼児が、それを手にはめたまま、今度はゆりかごに近づいて、乳飲み子の顔をなべつかみをはめた手で覆う。
友達との電話に夢中になっていた兄はそのことに気がつかないでいた。友達との電話が終わり、乳飲み子の異変に気がついたが、時すでに遅し。
どうしていいか、分からなかった兄が携帯で母親に連絡する。飛んで帰ってきた母親が乳飲み子の遺体を近くの公園に持って行ってそこに遺棄する。
母親はなぜこんなことをしたのか。それは、幼児が乳飲み子を殺したことがばれないように、誘拐事件を偽装するためだった。
事件が起きた家族の構成は少し変えてあるが、明らかにジョンベネ事件を念頭に置いたつくりになっている。
たぶんこのストーリーを書いた人物は、私がジョンベネ事件で抱いた事件のイメージとほとんど同じイメージを、この事件に関して持ったに違いない。