天体ショー4

海外、とりわけ欧米で、彗星の接近に関心が高いのは、天文学的興味からではなく、占星術の関連からだと思う。
彗星は天変地異、動乱、ありとあらゆる災いの前兆であると、占星術では考えられている。
現在は、彗星の正体が主に氷と塵でできたものだとわかっているが、それでも、まだ西欧社会では、これを凶事の前兆とする考え方が根強いのかもしれない。
彼らの心の奥底に刻まれた彗星に対する恐れが、ヘール・ボップ彗星の接近で掻き立てられたのだろう。
占星術への関心が少ない日本人の多くが、天体ショーとしての彗星にもあまり関心がないのは、これを見るために、わざわざ遠くまで出かける必要があるからだろう。
日本は、ありとあらゆる場所が夜でも相当に明るい。さらに、大気が汚れているため、空気の透明度が低い。
こういったところからでは、彗星はかなり明るいものでも、見ることができない。
夜明け前、あるいは日没後すぐの地平線近くに、ぼんやりと白っぽい塊のように見えることが多い彗星を見るためには、地平線まで見通せ、しかも、そこが真っ暗であるような場所に行く必要がある。
こういう条件を備えた場所といえば、人里離れた山奥の、さらには、駐車場のような開けた場所ということになり、事前に彗星観測のためのリサーチをしておかなければならない。
そうした手間をかけて、目的の彗星を目の前にしたとしても、その姿は写真で見るのとは大違いだ。
尾を引いた華麗な彗星の姿は、カメラを長時間露出して得られるもので、肉眼で見える彗星は、HB彗星のような巨大彗星を除くと、実に地味なものだ。
早い話、彗星を見たことがない人だと、肉眼で見える時でも、どれが彗星だか知っている人に教えてもらわないと、それとは気づかないだろう。
天体ショーといっても、本当の天体ファンではない人にとって、彗星はみんなで楽しむお祭り的観測には適さない。