右か左か?8

アサガオのつるの巻き方を牧野は、その著書の中で、左纏い(ひだりまとい)と表現している。つるが左に曲がって支柱に纏わりつくからだ。
このアサガオ左巻き説に異を唱えたのが、同じ植物学者の木原均だった。
ラセン形をなすものは、日本の植物学界を除いて全て表現が統一されている。アサガオのつるの巻き方はその区分によれば、右巻きとなると自らの著書で主張した。
以後、日本の植物学界は、アサガオのつるの巻き方で、違う考え方が混在することになり、ツルの巻き方について、日本では混乱したままのようだ。
木原は、日本の植物学界のみが異端であると考えたようだが、つるの巻きかたに関しては、西欧でも、二つの考え方があり、やはり、混乱と論争があったようだ。
その二つの考え方とは、これまでに述べた、時計の針の動きに基づいて、右回りか左回りかを決める考え方と、ラセン構造の外形に基づいて右巻きか左巻きかを判断する考え方の二つだ。
アサガオのツルの巻き方に関して、両者の判断は真っ向から対立する。
ここで、時計の針の回り方をなぜ右回りとするか、その理由についてみてみることにする。
時計の針は、円運動をしている。円運動には右も左もないはずで、それがどうして右回りなのか。これは、小学生の時の私の疑問で、担任が私の疑問にうまく回答できなかった問題だ。
右回りの由来は、時計の前身が日時計(sun dial)であったことにある。
ウィキペディアによると、日時計は古代バビロニアで発明されたとある。その後ギリシャ、ローマを経て、ヨーロッパ全土に広まった日時計の一つの形式が画像のようなものだ。
画像の日時計を例に考えると、午前中は、日時計の西側、この画像のように、北にむいて立っている人からすると、左側に影ができる。
影は、日時計の北側、つまり正面方向から、午後は東側、つまり、立っている人の右手方向に指すようになる。
この影の移動の仕方をラテン語のdexterという語で表現した。この言葉は、「右方向へ」ということを意味する。
10世紀中頃、ヨーロッパで機械式の時計が発明された際に、針の動き方を日時計の影の動き方にあわせたものにした。
英語で時計の針の動き方をclockwiseと表現するようになってからは、clockwiseがdexterの意味を引き継ぐことになり、ここで、clockwiseとrightとの関連付けが行われたのだ。