右か左か?11

  • ワイン製造に使われた木製の圧搾機

ラセン形の物品のうち、ropeについで歴史の古いものは、ネジ(screw)だ。ネジの歴史は意外に古く、紀元前三世紀にさかのぼる。
http://en.wikipedia.org/wiki/Screw
上記URLによれば、最初の頃、ネジは今のような何かを固定するための小さな部品ではなく、圧搾機、印刷機の構造の一部をなしていて、木製であったようだ。
その当時に、ラセンの部分をどのように呼んでいたかは、ネット検索では解らなかった。
ネジが現在のような、独立した固定パーツとして登場したのは、16世紀。固定するためのドライバーが出現がそれを裏付ける。
その頃はまだ木製で且つ、手製であったようだが、もうすでに、2種類のラセン形に基づく名前があったはずだ。その名前は、やはり、英語では、right-hand(ed)/left-hand(ed)で間違いなかろう。
その名前のつけ方だが、ropeの時と同じく、作り手の利き腕を表したものなのか、用具としての先輩である、2種類のロープの捻り方にあわせてつけたものなのかは、これもネット検索では明らかにならなかった。
しかし、ラセン形を持つ全ての物品に、right-hand(ed)/left-hand(ed)という区別のあることからしても、英語圏では、最初にロープに付けられた区別に従って、新しく出現したものに、区別を付けてきたものと考えられる。
すると、right-hand(ed)/left-hand(ed)がもともと、利き腕を表す言葉で、運動の方向を表す言葉ではなかったものが、英和辞典の3の意味づけを持つようになったのはいつ頃からだろうか。
Wikipediaの記述からすると、工業製品としての金属製のネジが一般に普及する、19世紀以降と思われる。
その頃には、一般人もこれを使うようになっていたに違いない。その場合、ネジを回す方向が素人の場合、いつも問題になっただろう。
そこで、right-hand(ed) thread(右ネジ)を締め付ける場合に、右に(clockwise)回すことを覚えやすくするため、"righty, tighty"というような、日本語で言えば語呂合わせのようなフレーズも考え出された。
時計の針の動く方向(clockwise)を、右方向(to the rihgt)と関連付けるのは、10世紀にはすでに行われていたことは、すでに述べた。
ネジの回し方の便利な覚え方のために、right-hand(ed)とclockwiseを、rightに仲立ちさせて、無理やりこじつけたのだ。
それ以来、運動の方向性とは本来、関係のないright-hand(ed)/left-hand(ed)が運動の方向性が起源であるclockwiseと関連付けられて、今日に至っているのだが、このことが植物のつるの巻き方に関して、西欧でも混乱があることの一因となってしまった。