右か左か?10

ラセン形のものを、その巻き方により、right-hand(ed)とleft-hand(ed)の2種類に分けるのが英語圏の区別の仕方だ。
2種類のラセン形の判別法は、ラセンの中心軸を鉛直方向に立て、これを横から見る。
ラセンのパターンが右上がりならright-hand(ed)で、左上がりならleft-hand(ed)と判定する。
この判定法によると、アサガオのツルの巻き方は右上がりなので、right-hand(ed)となる。
このright-hand(ed)/left-hand(ed)というのはどういう意味なのか。
手元にある英和辞典のright-handedの項目には次のような記述があった。

right-handed
1 右利きの; 右利き用の. 2 (殴打が)右手による. 3 右回りの, (ねじが)右巻きの, (ドアが)右開きの.

英和辞典の3番目の訳をアサガオのツルに適用すると、右巻きとなる。
1と2の訳は、「右利きの」と「右手による」となっている。英語から見ても、右手に関することに間違いなさそうだが、それがどうして「右巻きの」になるのか。
そこで、right-hand(ed)/left-hand(ed)で区別される物品をもう一度、見てみると、ロープ、つるまきバネ、コイル、ネジなどがあった。
これらの物品の中で、最も古い歴史を持つものは、ロープで間違いなかろう。人間がその手に道具を持つようになったその時から、ロープはそうした道具とともに存在したに違いない。

  • right-handed lay 3-strand rope

そのロープに関しては、撚り方(よりかた)の違いにより、right-handed lay ropeとleft-handed lay ropeの2種類に分けられる。
このときのright-handed/left-handedは、英和辞典の1の意味ではなく、2の意味で使われていることも間違いなかろう。
ロープが最初に作られた頃は、当然のごとく、手作りであったはずだ。2種類のロープはそれを作った人間の利き腕をそのまま反映したものと考えられる。
どの社会でも、右利きの人間のほうが多いから、2種類あるロープのうちの一方が他方よりも数が多く、数の多いロープが標準となるのは当然だ。
西欧社会で最も一般的な3-strand ropeを見ると、そのほとんどがright-handed layだ。
ropeが手作りから、機械による製作になっても、手作りの時の呼び名がそのまま受け継がれたのだろう。