That is a dog.

土曜日の朝、毎週見ている番組がある。ケーブルテレビのナショジオでやっている「ザ・カリスマドッグトレーナー」という番組だ。
アメリカのドッグトレーナー、シーザー・ミランが悩めるドッグオーナーの自宅まで出張。問題を抱えるワンコたちを鮮やかな手並みで躾けるというものだ。
シーザーがいつも主張するのは、飼い主が飼い犬に、自分がリーダーであることを認めさせることが重要だというもの。
その際に大事なのが飼い主の側の精神的状態、常に冷静さを保ち、犬に対して毅然と振舞うことだという。
さて、そのシーザー。時々使うフレーズが表題のもの。"That is a dog."
この英語ならわかるという人がほとんどだろう。
では、シーザーがこのフレーズを番組の中の、どんな状況の時に使うかわかるだろうか。
こういっては何だが、ある程度英語が使える人を含めても、この英語の本当の意味を判っている日本人はほとんどいない。
意味を判っていないから、どんな状況で使うべきなのかも判るはずがない。
That is a dog. この英文は中学で英語を習い始めて、文の形で英語を学ぶほとんど一番最初のものだろう。
しかし、日本での英語教育はそれぞれの文を実際にどんな状況で使うのかをまったく考慮しない、形式的なものだ。
単語の知識や、文法知識は増えても、それをどのように使うかのコミュニケーション能力はまったくといっていいほど伸びない。
That is a dog. という文にしても、その意味をたとえば、中学生の英語の点数がよい生徒聞いてみれば、thatは、自分からある程度の距離のあるものを指していて、isは「〜です」という意味。aは「一つの、一匹の」という意味で、dogは「犬」だから、文全体は「あれは、一匹の犬です」となるという風に答えるだろう。
番組中、シーザーがこのフレーズを使うのは、躾がうまく行っていない犬に、シーザーが実際に、どうしつけるかを飼い主に示し、その躾けどおりに犬が振舞った時だ。
犬の飼い主は当然ながら、アメリカ人の大人。その人たちに、「あれは一匹の犬です」という意味のフレーズを吐いたところで何の意味もない。
この文の実際の意味は「ああいう振る舞いをしてこそ、犬は犬なのです」ということなのだ。
この番組は吹き替えではなく、字幕がでる。その字幕の、該当文の訳は、「あれが犬のあるべき姿です」とあった。
さすがに、字幕翻訳者は「あれは一匹の犬です」とはしなかった。
ここで付け加えなければならないのは、That is a dog.が上記の意味になるのは、上で述べたような状況だからで、別の状況ならば別の意味になるということだ。
実際にThat is a dog. 別の状況で使われるとして、その状況がどんなものかを即座に答えられたら、あなたの英語力はかなりのものと言える。