町スズメと村スズメ

今日の読売新聞、一面の編集手帳を次に引用する。

喜んでいるのは、花見客ばかりではないらしい。サクラが満開になった東京・上野公園には"人慣れスズメ"なるものが現れ、人様のそばをチョンチョンと飛び回っている◆たらふく御馳走のおこぼれに預かれる年に一度のお祭りなのだろう。人の手のひらに乗って、餌をついばむ愛想良しもいる。一昔前なら、文鳥かオウムにしかできなかった芸当ではなかろうか。鳥類学者らによると、日本の都市部であまねく進む現象だと言う◆スズメは本来、人嫌いである。気配を察するや一目散に逃げ出すその習性は、稲をくいあらす害鳥として、人に追われた記憶を遺伝子が受け継ぐためとされる◆全国には、農地だが作物を生み出さない耕作放棄地が、埼玉県とほぼ同じ約40万㌶ある。1面掲載「蘇れ」(22日)で知った。追いかける人がめっきり減って、スズメたちも張り合いをなくしたのかもしれない◆政府は環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加を決めた。これが農業に前を向かせる転機になるといい。元気な農村の復活を願おう。スズメはスズメらしく豊かな田畑を飛び回って、無愛想なままがいい。

人馴れしたスズメとは初めて聞いた。スズメの数が全国的には、減ってきているという話をどこかで聞いたことがある。
都市中心部およびその近郊では、田んぼが減った上に、家屋の構造がスズメの巣作りには向かなくなってきているからだという。
その一方で、害鳥として、人に追われたり、嫌われることもなくなったのだろう。人にあまり警戒心を持たない「人馴れスズメ」は町スズメと呼べるだろう。
家では毎朝、ダイニングの窓辺にやってくるスズメたちにパンくずを与えている。たくさんのスズメが窓の外にやってくるが、よく馴れているのは、ほんの数羽。そのスズメたちも、人間全般に警戒心を持たなくなったわけではない。
家のあたりは、今でも、多くの田んぼが残る地域で、そこに暮らすスズメは、昔ながらの生活をしている。都市部に住むスズメが町スズメなら、家の周辺に暮らすスズメは村スズメと言える。
あるブログの投稿欄で、「群雀」の読み方が話題になったことがある。
与謝蕪村の俳句「夕立や草葉を掴む群雀」にもあるように、「むらすずめ」と読むのが正しい。
ところがこの俳句、「夕立や草葉をつかむむら雀」のように、ひらがな表記される場合があり、この「むら雀」を「村すずめ」だと思い込んでいる人もいるらしい。
「村すずめ」がいるなら、「町すずめ」がいないとおかしいわけだが、人馴れスズメの出現で、スズメにも、暮らしぶり、性格も異なる、「村すずめ」と「町すずめ」の2タイプがいるようになったわけだ。